①ブリットポップブームの中で異質な…
90年代、ブリットポップブームの中で異質な存在だったMansun（マンサン）。
曲はプログレのように複雑で美しく、歌詞はひねくれていて難解。商業的な成功よりも、自分たちの作りたいものを貫く——そんな孤高のバンドでした。売れることよりも芸術を優先するその姿勢が、彼らの楽曲には色濃く刻まれています。
そんなMansun最大のヒット曲が「Legacy」。1998年リリースの2ndアルバム『Six』に収録されたこの曲は、シングルとして全英7位を記録。Mansunの中で最も高いチャート順位を誇る作品です。
「俺には関係ない、もうどうでもいい」と歌い出し、サビ前では「明日すべてが終わっても構わない」と吐き捨てる——救いようのないほどネガティブな言葉たち。なのに、それとは裏腹にメロディはどこまでも流麗で美しくて…。
この抗いがたいギャップこそ、一度聴いたら忘れられない中毒性の正体なんです。
歌詞の意味を噛みしめながら聴くと、美しい旋律と悲観的な言葉がじわじわと心の隙間に染み渡ってきて、聴き終わる頃には余韻の中で静かに放心してしまう。
孤独な夜にひとりで聴いてこそ、本当の価値が見えてくる——そんな、人生に疲れた人のための名曲です。
Youtube【Mansun - Legacy (Official Promo Video)】
②歌詞と和訳
If you fear transition to your other lifeDon't need money to be thereLeave behind your money just to prove your worthWon't be here so I don't careIf you strap your conscience to your vision thingWon't be here so I don't careProve your worth to people that you called your friendsWon't be here so I don't care
I wouldn't care if I was washed up tomorrow you seeReading novels is banned by the Marquis de SadeAll relationships are emptying and temporary
Life is wearing me thinI feel so drained, my legacyA sea of faces just like me andLife is wearing me thinI feel so drained, my legacyA sea of faces just like me
I've been drained, emotion is a bitter fateWon't be here so I don't careI concede relationships have left me weakWon't be here so I don't careLook for something worthy to replace my guiltWon't be here so I don't careProve my worth to people who I called my friendsWon't be here so I don't care
I wouldn't care if I was washed up tomorrow you seeReading novels is banned by the Marquis de SadeAll relationships are emptying and temporary
Life is wearing me thinI feel so drained, my legacyA sea of faces just like me andLife is wearing me thinI feel so drained, my legacyA sea of faces just like me
Nobody cares when you're goneNobody cares when you're gone
I wouldn't care if I was washed up tomorrow you seeReading novels is banned by the Marquis de SadeAll relationships are emptying and temporary
Life is wearing me thinI feel so drained, my legacyA sea of faces just like me andLife is wearing me thinI feel so drained, my legacyA sea of faces just like me
Nobody cares when you're goneNobody cares when you're gone…
③デビュー当初から普通のバンドとは…
デビュー当初から、Mansunは「普通のバンド」とはまるで違いました。それはキャリアの出発点からも明らかです。
玉石混交だったブリットポップブームの中、「オアシス以来の衝撃」とまで絶賛されたデビュー作『Attack of the Grey Lantern』。なんとこのアルバム、架空の村を舞台にしたコンセプトアルバムなんです。デビュー作にしてこのこだわり。すでに他のバンドとは一線を画していました。
サウンドもとにかく独特。プログレのような複雑な曲展開に、グラムロックのきらびやかさ、そしてUKロック特有の切ないメロディ。このごちゃ混ぜ感こそがMansunの魅力でした。
その極みとも言えるのが2ndアルバム『Six』。
良い意味で「やりすぎ」なこの作品は、文学や哲学の引用がちりばめられた難解な歌詞と、目まぐるしい展開で商業性を完全に無視。
でも、だからこそMansunは「誰にも似ていないバンド」として、多くの人の記憶に刻み込まれたのだと思います。
④2ndアルバムのヒットがバンドの運命を狂わせ…
2ndアルバム『Six』は全英6位を記録。しかし皮肉なことに、このヒットがバンドの運命を狂わせてしまいます。
芸術性を重視した『Six』の内容に懸念を抱いたレコード会社は、3rdアルバム制作に介入。次作『Little Kix』では、フロントマンのポール・ドレイパーが曲作りの主導権を失い、バンド内には大きなストレスが生まれていきました。
その結果、幻の4thアルバムの制作途中でバンドは崩壊。2003年、Mansunは解散してしまいます。
あまりにも、突然でした。
Mansunは商業音楽の世界でやっていくにはあまりにも不器用だったんだと思う。自分たちのやりたい音楽と、周囲の期待との間で、うまくバランスを取ることができなかった。
ポール・ドレイパーは、自分の音楽に少しの嘘もつけないミュージシャンだったのでしょう。
だからこそ、Mansunに似た音楽性を持つバンドが、その後ほとんど登場しなかったのも納得です。
プログレ、ポップ、グラム——異なる要素を奇跡的なバランスで融合できたのは、あの時代、あのメンバー、そしてポール・ドレイパーという才能がいたからこそ。
あの危うくも美しいバランスは、二度と再現できない、唯一無二のものだったのかもしれません…。
