①中性的で華やかなビジュアルと…

中性的で華やかなビジュアル、そしてキャッチーなサウンドで一世を風靡したグラムロック。デヴィッド・ボウイはその先駆者の一人であり、そして世界的なトップアーティストでもある偉大なミュージシャン。

「glamorous(グラマラス)」が語源のグラムロックは、中性的で派手、煌びやかなビジュアルとキャッチーなサウンドが特徴です。日本のバンド、ザ・イエローモンキーもグラムロックの影響を受けているらしく、インディーズ時代からデヴィッド・ボウイの「Ziggy Stardust」をカバーしています。イエモンのビジュアルや楽曲にボウイの影響が色濃く感じられるのも当然ですね。

ボウイは音楽だけでなく俳優としても活躍しており、1983年の映画『戦場のメリークリスマス』では、俘虜となった陸軍少佐ジャック・セリアズ役を演じました。この映画の原題は『Merry Christmas, Mr. Lawrence』であり、映画ファンの方々にはこちらのタイトルで馴染みがあるかもしれません。

ボウイは1967年から2016年の最後のアルバムまでに、実に25枚のオリジナルアルバムを発表しています。その膨大でバラエティ豊かな曲の中で私が特に思い入れが深く、今でもよく聴いている曲。それが5thアルバムタイトルの「Ziggy Stardust」に似た曲名の宇宙的で狂気的なほど美しいバラード「レディ・スターダスト」です。

 

↓Youtube【Lady Stardust (2012 Remaster)】

 

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②歌詞と和訳

Songwriter - David Bowie

People stared at the makeup on his face
Laughed at his long black hair, his animal grace
The boy in the bright blue jeans
Jumped up on the stage
And lady stardust sang his songs
Of darkness and disgrace
群衆は化粧をした彼の顔を見つめ
その長い黒髪と野性的な優雅さを笑った
鮮やかな青のジーンズを履いた少年が
ステージに飛び乗った
レディ・スターダストは彼の歌を歌う
闇と恥辱の歌を
And he was alright, the band was altogether
Yes he was alright, the song went on forever
And he was awful nice
Really quite out of sight
And he sang all night long
彼は完璧 バンドの演奏も申し分なかった
そう彼は完璧でその歌は永遠に続いた
彼の恐ろしいくらいの美貌は
あっさりと目を奪われてしまうほどで
そして彼は一晩中歌い続けていた
Femme fatales emerged from shadows
To watch this creature fair
Boys stood upon their chairs
To make their point of view
I smiled sadly for a love I could not obey
Lady Stardust sang his songs
Of darkness and dismay
魔性の女たちが影の中から現れた
その美しい存在を見つめるために
少年たちは椅子の上に立ち上がり
視界を確保しようとする
私は叶わぬ愛に悲しく微笑んだ
レディ・スターダストは彼の歌を歌う
闇と失望の歌を
And he was alright, the band was altogether
Yes he was alright, the song went on forever
And he was awful nice
Really quite out of sight
And he sang all night long
彼は完璧 バンドの演奏も申し分なかった
そう彼は完璧でその歌は永遠に続いた
彼の恐ろしいくらいの美貌は
あっさりと目を奪われてしまうほどで
そして彼は一晩中歌い続けていた
Oh how I sighed
When they asked if I knew his name
ああ ため息が出てしまう
彼の名を知っているかと聞かれるたびに
And he was alright, the band was altogether
Yes he was alright, the song went on forever
And he was awful nice
Really quite out of sight
And he sang all night long
彼は完璧 バンドの演奏も申し分なかった
そう彼は完璧でその歌は永遠に続いた
彼の恐ろしいくらいの美貌は
あっさりと目を奪われてしまうほどで
そして彼は一晩中歌い続けていた

 

 

③好みの洋楽アーティストを発見する…

私が好みの洋楽アーティストを発見するきっかけと言えば、レンタルショップで店員さんのおすすめコメントのポップを見たり、ショップで新品CDを眺めてたらアルバムのジャケットや帯に書いてあるコメントに引き寄せられたり、コンピレーションアルバム(当時はオムニバスアルバムなんて呼ばれてたっけ)に偶然収録されていた曲だったり…。

購入した国内盤CDでそのミュージシャンを紹介するライナーノーツにライターが書いていた他のバンド、ってのも新たな発見としてはかなり多かったパターンだと思う。

とにもかくにもデヴィッド・ボウイのアルバム『ジギー・スターダスト』が名盤として世界的に高い評価を受けていることを知り興味が湧いた私は、レンタルショップでそのアルバムを借りてみることに。これがデヴィッド・ボウイの音楽世界への入り口でした。

初めて耳にした瞬間、その斬新で中性的なビジュアルと圧倒的なカリスマ性に一瞬でノックアウト。アルバムごとにガラッと表情を変える楽曲の深さと多様性に引き込まれていきました。そんなこんなでこのアルバムきっかけにボウイの他のアルバムや曲も聴いてみたい欲が出て、「ライフ・オン・マーズ?」や「スペースオディティ」など宇宙をテーマにしたボウイの名曲群にも出会うことが出来たんです。

 

 

④アルバムを聴く前は…

アルバムを聴く前はタイトルトラックである9曲目の「ジギー・スターダスト」は良い曲なんだろうけど、まあ他にも1,2曲素晴らしい曲が入っていたらラッキーだな程度の期待しかしていませんでした。

だけどいざ聴いてみると1曲1曲のクオリティの高さとコンセプトアルバムとしての壮大な世界観にビックリ。地球の資源があと5年で枯渇するという緊急事態に突如現れたバイセクシャルのロックスター『Ziggy(ジギー)』。彼を主人公にした壮大なストーリーがアルバム全体を通して描かれています。

若い頃はコンセプトアルバムの意味もわからずとにかく洋楽を聴き漁っていたけど、今思えばこれは私が初めて体験したコンセプトアルバムだったのかもしれません。

 

日本でもCMで使われた「スターマン」やタイトルトラックの「ジギー・スターダスト」は単体でシングルとして十分に勝負できる完成度だし、短くもポップな印象の「スター」や悲哀に満ちた「ロックンロール・スーサイド」などは何度も何度もリピートしてたのは良い思い出。

あまりにも良い曲が多いので「ムーンエイジ・デイドリーム」や「ヴェルヴェット・ゴールドマイン」の魅力に気づくのは大人になってからでした。それだけこのアルバムには時間をかけて発見できる新たな楽しみが詰まってたんですよね。

デヴィッド・ボウイの『ジギー・スターダスト』はまさに時代を超えて愛されるべきコンセプトアルバムと言っても物足りないくらいの名盤。これ以上の賞賛の言葉が思いつかない自分の語彙力の無さが虚しすぎる…。

 

 

⑤1998年ごろにNTTのCMで…

「レディ・スターダスト」は1998年ごろにNTTのCMで使われていた曲。ピアノの美しくも哀しげなメロディと独特な歌詞世界に思わずうっとりしてしまうバラードです。

私はピアノが強く主張する曲が大好物。そんでもってこの曲のピアノの旋律はまさにその典型。静かなイントロから始まって、ボウイが歌声を発する瞬間に力強く美しく重なるピアノの音色には何度聴いても心を奪われてしまう…。

ところで、シングル曲がアルバムバージョンでアコースティックやピアノのみのバージョンになっていることがよくありますよね。

たぶんみなさん同じかもしれないけど、私にとっては原曲に勝るものなし。原曲がやっぱり一番じゃないですか?でもこの「レディ・スターダスト」のピアノバージョン(デモバージョン?)は数少ない例外のひとつで、ピアノだけのシンプルな演奏でも原曲に劣らないどころか、その時の精神状態によってはむしろ原曲以上に胸に響くこともあるから不思議。

 

ちなみに、このアルバムの次にリリースされたこれまた名盤の「アラジン・セイン」にもピアノを前面に押し出した曲があるんですよね。特にタイトルトラックの「アラジン・セイン」は意図的に取り入れた不協和音が理解不能な美しさで、「レディ・スターダスト」とはちょっと違った意味で狂気的な名曲。好みが別れる所だけどボウイに興味を持った方にはぜひ聴いてほしい一曲です。