①1985年にアフリカの飢餓と貧困を…
「Tears Are Not Enough」(ティアーズ・アー・ノット・イナフ)は、1985年にアフリカの飢餓と貧困を救うために制作されたチャリティーソングで、「カナダ版We Are The World」と呼ばれることも。
歌っているのは、カナダ出身のアーティストたちによって結成されたNorthern Lights(ノーザン・ライツ)です。
30万枚以上を売り上げ、1990年までの約5年間でおよそ300万ドルが救済にあてられました。
作曲を手がけたのは、「Hard to Say I'm Sorry(素直になれなくて)」などで日本でも超有名なカナダ出身のプロデューサー、デヴィッド・フォスター。
どこかAORの雰囲気も感じさせる壮大で美しい楽曲に仕上がっていて、世界的に大ヒットした「We Are The World」よりもこちらの方が好き、という人も多いかもしれません。
【Northern Lights - Tears Are Not Enough (with names) (SUPERSCALED) 】
②歌詞の和訳
Songwriter(s) - David Foster (music)
Bryan Adams, Jim Vallance (lyrics)
Rachel Paiement (French lyrics)
As every day goes by
How can we close our eyes
(ゴードン・ライトフット)
Until we open up our hearts
(バートン・カミングス)
毎日がただ過ぎていく
僕たちが心を開くまでは
目をつぶってなんかいられないよ
We can learn to share
And show how much we care
(アン・マレー)
Right from the moment that we start
(ジョニ・ミッチェル)
分かち合うことを学んで
どれだけ気にかけているかを伝えるんだ
その気になった瞬間からすぐにでも
Seems like overnight
We see the world in a different light
(ダン・ヒル)
Somehow our innocence is lost
(ニール・ヤング)
ある日突然
世界が違って見えてくる
気づけば、純粋な心を失っていたんだ
How can we look away
'Cause every single day
(ブライアン・アダムス)
We've got to help at any cost
(マイク・レノ&リバティ・シルヴァー)
目を背けることなんてできない
毎日が大切だから
どんな代償を払っても助けなきゃいけないんだ
We can bridge the distance
Only we can make the difference
Don't you know that tears are not enough
(1番を歌った9人全員)
距離を越えることだってできる
変えられるのは僕たちだけ
わかるだろ? 涙だけじゃ足りないんだ
If we can pull together
We could change the world forever
Heaven knows that tears are not enough
(1番を歌った9人全員)
みんなが力を合わせれば
世界を永遠に変えることだってできる
神様もわかってるよ
まだ涙だけじゃ足りないって
It's up to me and you
To make the dream come true
(キャロル・ベイカー&ロニー・ホーキンス&マレー・マクロークラン)
It's time to take our message everywhere, you know
(コリー・ハート)
僕と君、ふたり次第なんだ
夢を叶えられるかどうかは
今こそ、このメッセージを世界中に届けるときだよ
C'est l'amour qui nous rassemble
D'ici l'autre bout du monde
(ヴェロニック・ベリヴォー&クロード・デュボア&ロベール・シャルルボワ)
愛があるから、僕たちはひとつになれる
ここから、世界の果てまでも
Let's show them Canada still cares
(ブルース・コバーン)
You know that we'll be there
(ゲディ・リー)
カナダが今も思いやりの心を持っていることを伝えよう
僕たちはいつだってそこにいる
We can bridge the distance
Only we can make the difference
Don't you know that tears are not enough
(1番・2番を歌った18人全員)
僕たちには、距離を越える力がある
変化をもたらせるのは、僕たち自身なんだ
わかってるよね? 涙だけじゃまだ足りないってこと
If we can pull together
We could change the world forever
Heaven knows that tears are not enough
(1番・2番を歌った18人全員)
力を合わせれば
きっと世界を永遠に変えることができる
神様だってわかっている
涙だけでは救えないってことを
If we should try
(ブライアン・アダムス&トニー・ゲラード)
Together, you and I
(全員)
Maybe we could understand the reasons why
(アルフィー・ザッパコスタ)
もし僕たちが、
君と僕とで心を合わせることができたなら
なぜこんなことが起こるのか、理由がわかるかもしれない
If we take a stand
(リサ・ダルベロ&キャロル・ポープ&ポール・ハイド)
Every woman, child and man
(サロメ・ベイ&マーク・ホームズ&ロレーヌ・セガト)
We can make it work — for God's sake, lend a hand
(マイク・レノ)
もし立ち上がることができたなら
女性も、子どもも、大人もみんなで
きっと何かを成し遂げられるはず
お願いだ、どうか手を貸してほしい
We can bridge the distance…
僕たちには、距離を越える力が…
③カナダ出身のアーティストで結成された…
ノーザン・ライツはカナダ出身のアーティストで結成されたグループ。
カナダでは超有名な人たちばかりみたいですが、日本ではあまりなじみのない名前も多いかもしれません。
正直、私も当時はブライアン・アダムス、デヴィッド・フォスター、ニール・ヤング、ジョニ・ミッチェル、マイク・レノ、コリー・ハートくらいしか知らなかったです…。
でも、ブライアン・アダムスが作詞、デヴィッド・フォスターが作曲という時点で、名曲になる予感しかしなかったんですよね。
で、実際に聴いてみたら、期待通りどころか、それをはるかに超える感動がありました。
メロディの良さはもちろんデヴィッド・フォスターの手腕を考えれば当然だけれど、歌声も素晴らしくて…。
それもそのはず、私が名前を知らないだけでどのシンガーもカナダではトップクラス。そんな人たちが心を込めて歌っているんだから、響かないはずがないんですよ。
「Tears Are Not Enough」を聴いて、「この声いいな…」と思ったら、そのアーティストの他の曲を聴いてみるのもアリ。こうやって、どんどん新しい曲に出逢っていくわけですね。
③歌う順にアーティストをざっくりと紹介
ここでは、日本でも知名度のあるアーティストが多く参加している「1番」のパートに登場するアーティストを、歌う順にざっくり紹介します。
ちなみにコリー・ハートは2番からの参加ですが、カナダを代表する人気シンガーのひとりなので最後に加えて紹介しています。
(1)Gordon Lightfoot - ゴードン・ライトフット
魅力的なバリトンボイスの持ち主で、カナダのグラミー賞と呼ばれるJUNO賞を数多く受賞。ボブ・ディランも好きなアーティストとして敬意を表している、カナダが誇る世界的なフォークレジェンド。
【代表曲】
If You Could Read My Mind(1970) … 全米5位
Sundown(1974) … 全米1位
Carefree Highway(1974) … 全米10位
The Wreck of the Edmund Fitzgerald(1976) … 全米2位
(2)Burton Cummings - バートン・カミングス
3週連続全米No.1を記録した「American Woman」で知られるバンド、ゲス・フー(The Guess Who)の元リードシンガー兼キーボード。American Womanはレニー・クラヴィッツのお気に入りの曲でもあり、1999年にカバーバージョンがリリースされています。
【代表曲】
These Eyes(1969) … 全米6位
No Time(1969) … 全米5位
American Woman(1970) … 全米1位
No Sugar Tonight(1970) … 全米1位
(3)Anne Murray - アン・マレー
1974年度のグラミー賞で最優秀カントリー女性歌手賞を受賞。1978年の「You Needed Me(辛い別れ)」での全米No.1獲得は、カナダ出身の女性ソロアーティストとしては史上初の快挙。
【代表曲】
Snowbird(1970) … 全米8位
Danny's Song(1972) … 全米7位
You Won't See Me(1974) … 全米8位
You Needed Me(1978) … 全米1位
(4)Joni Mitchell - ジョニ・ミッチェル
フォークをベースにジャズやロックなどを取り入れた繊細な楽曲は多くのフォロワーを生み出しました。1969年~2016年にかけて9つものグラミー賞を獲得し、ロックの殿堂入りも果たしているカナダが世界に誇る女性シンガーソングライターです。
【代表曲】
Chelsea Morning(1969) … アルバム「Clouds」収録
Both Sides Now(1968) … アルバム「Clouds」収録
The Circle Game(1970) … アルバム「Ladies of the Canyon」収録
Help Me(1974) … 全米7位
(5)Dan Hill - ダン・ヒル
繊細で誠実な雰囲気の大人のバラードが得意で、ジョージ・ベンソンやセリーヌ・ディオンのプロデュースをしたことも。1978年の「Sometimes When We Touch(ふれあい)」は全米3位を獲得しており、カナダでは根強いファンが多いアーティストです。
【代表曲】
Sometimes When We Touch(1978) … 全米3位
Can't We Try(1987) … 全米6位
(6)Neil Young - ニール・ヤング
CSN&Y(クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング)や、バッファロー・スプリングフィールドのメンバーとして活躍。1970年代前半にはフォークロック界に燦然と輝く名盤「After The Gold Rush(アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ)」「Harvest(ハーヴェスト)」を立て続けに発表。2010年のバンクーバーオリンピックの開会式では、カナダ代表のアーティストとしてパフォーマンスを行っています。
【代表曲】
Only Love Can Break Your Heart(1970) … 全米33位
I Believe in You(1970) … アルバム「After The Gold Rush」収録
Heart of Gold(1971) … 全米1位
Old Man(1972) … 全米31位
(7)Bryan Adams - ブライアン・アダムス
ハスキーでパワフルなボーカルを武器に1980年代~1990年代を中心に数多くのヒット曲を世に送り出した、世界でも有数のロックスター。1991年にリリースされ、イギリスで16週連続No.1を記録し、ギネスにも認定された大ヒット曲「(Everything I Do) I Do It for You」を始めとした数々のバラードは日本人好みのキャッチーなメロディが多い。1993年には映画『三銃士』のテーマソング「All for Love」をロッド・スチュワート、スティングと歌っており、当然のようにアメリカで1位、イギリスで2位の大ヒットを記録しています。
【代表曲】
Straight from the Heart(1983) … 全米10位
Heaven(1985) … 全米1位
(Everything I Do) I Do It for You(1991) … 全米1位
Please Forgive Me(1993) … 全米7位
All for Love(1993) … 全米1位
(8)Mike Reno - マイク・レノ
キーボードを前面に押し出したポップなハードロックで1980年代にヒットしたバンド、ラヴァーボーイのリードボーカル。1984年の映画『フットルース』では挿入歌の甘いバラード「Almost Paradise(パラダイス~愛のテーマ)」をアン・ウィルソンとデュエットしたことでも当時話題に。
【代表曲】
Turn Me Loose(1980) … 全米35位 ※Loverboy
Working for the Weekend(1981) … 全米29位 ※Loverboy
Lovin' Every Minute of It(1985) … 全米9位
This Could Be the Night(1986) … 全米10位
(9)Liberty Silver - リバティ・シルヴァー
カナダのグラミー賞と言われるJUNO賞(ジュノー賞)を受賞した初の黒人女性。R&Bだけでなく、ポップやロックはもちろんのことジャズやゴスペル、レゲエといった多くのジャンルからインスピレーションを受けた幅広い楽曲が特徴です。
【代表曲】
Lost Somewhere Inside Your Love(1985)
Heaven Must Have Sent You(1989) ※Otis Gayle & Liberty Silver
(10)Corey Hart - コリー・ハート
1980年代に甘いルックスとセクシーな歌声で、同じくカナダ出身のブライアン・アダムスと共に本国のカナダだけでなく日本でも人気を獲得。日本ではエルヴィス・プレスリーのカバーソングである「Can't Help Falling In Love(好きにならずにいられない)」が有名で、1989年には日本武道館のステージにも立っています。映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の主演をスピルバーグ監督に打診されるも、音楽に集中したいという理由から断ったという逸話も。
【代表曲】
Sunglasses at Night(1984) … 全米7位
It Ain't Enough(1984) … 全米17位
Never Surrender(1985) … 全米3位
Can't Help Falling in Love(1986) … 全米24位