①全員が超絶スキルの技巧派集団
超絶技巧の演奏スキルを持ったメンバーで結成されたMr.BIGは1990年代前半から後半にかけて日本で人気が爆発。
しかし海外での評価は日本に比べてありえないくらい低く、アルバムチャートの最も上位に食い込んだ2ndの「リーン・イントゥ・イット」でも母国アメリカで15位、UKでは28位止まり。
日本のオリコン週間チャートで1位を獲得した4thアルバムにいたってはアメリカやUKではチャートにランクインすらしていないという、まさに典型的なビッグ・イン・ジャパン。
その4thアルバム「ヘイ・マン(Hey Man)」は日本で人気絶頂だった1996年にリリース。
日本人好みのメロディアスな良曲が目白押しのこのアルバムの中でもファンの間で特に人気の高い曲が、2曲目に収録されている変化球的なミディアムテンポのバラードナンバー「テイク・カヴァー(Take Cover)」です。
この曲は特にテクニカルなことをやっているわけではない…ように聴こえるけど実はかなり演奏が難しい曲。
特にギターのポール・ギルバートとドラムのパット・トーピーの演奏パートは激ムズと言われています。
淡々と披露される難易度の高い演奏。そこに絶妙に絡んでくるエリック・マーティンの狂おしいほどハスキーで情熱的なハイトーンボイスもたまりません。
大きく盛り上がる部分はないけどドラムやギターの演奏がいつまでも耳に残ってじわりじわりと深みにハマってしまう。
派手さが無いからこそ一度ハマってしまうとなかなか抜け出せなくなってしまうのかもしれません…。
↓Youtube【Mr. Big - Take Cover (MV)】
②歌詞の和訳
↓Songwriter(s) - Eric Martin, Paul Gilbert, André Pessis
Words in my mouthSomeone told me to sayThey go unspokenMy mind gets in the wayI hold my tongueSave my, save my soulTrue to myselfAnd stay goldSometimes you gotta pull the plugSomewhere a little place to crawlLove me for who I amIt doesn’t have to be this hardFor an ordinary man★I wanna take cover, take coverFrom you, wake me when it’s overTake cover, I wanna take coverFrom youSold all my dreamsWatched them all disappearI've spilled my bloodNo one seems to careSometimes you gotta pull the plugSomewhere a little place to crawlLove me for who I amHow low do I have to go to make you understand(Repeat ★×2)Cover, Take CoverNothing I can do to keep from going underTake cover, Take CoverFrom YouSave my soulSave my soul
③Mr.BIGで一番有名な曲は間違いなく…
Mr.BIGで一番有名な曲は間違いなく2ndアルバム「リーン・イントゥ・イット」に収録されている「To Be With You(トゥー・ビー・ウィズ・ユー)」でしょう。
オムニバスアルバムに収録されていることも多いこのアコースティックな名バラードは、Mr.BIG最大のヒットシングル(全米1位、全英2位)。
私もMr.BIGにハマったきっかけは「To Be With You」で、高校生の時は狂ったように聴きまくってました。
↓Youtube【Mr. Big - To Be With You 4K Video】
でも『Mr.BIGの曲の中で今までで一番多く聴いたのはどの曲か?』ということなら間違いなく「Take Cover」です。
4thアルバム「ヘイ・マン」を購入した当時は、4曲目のアカペラチックな「Goin' Where The Wind Blows(風にまかせて)」とか、7曲目の哀愁漂うロックバラード「If That's What It Takes(イフ・ザッツ・ホワット・イット・テイクス)」の方を好んで聴いていたような気もするけど💧
「Take Cover」は最初はそれほどガツン!とはこなかったけど、何回か聴いてるうちにギターとドラムの演奏が中毒になっていって定期的に聴かずにはいられなくなってました…。
④正確無比なアルペジオのギターフレージング
この曲の聴きどころは何といってもポール・ギルバートのアルペジオのギターフレージングと、今は亡きパット・トーピーの『リニアパターン』と呼ばれるドラミングです。
最初から最後までずっと同じようなメロディ、リズムが繰り返されているのがこの曲の特徴。
特に、曲を通してバックで延々と流れ続けているポールのアルペジオのギターフレージングの旋律は素晴らしく、あまりにも正確無比なので陶酔感すら感じてしまいます。
ちなみに『アルペジオ』っていうのはギターをコード(和音)で鳴らさず、単音で順番に弾いていく弾き方のこと。
もし仮に自分がギターを弾けたとしても、神経質な私にはこんなに繰り返して同じフレーズをライブ中に弾き続けるのは性格的に無理かもしれません…。
⑤激ムズと噂されるドラムのリニアパターン
そしてもう一つの聴きどころがパット・トーピーのドラムで、こちらはギター以上に同じフレーズの繰り返し。
このドンドコドコドコ、ドンドコドコドコ…というドラムの叩き方は『リニアパターン』と呼ばれるもの。
リニアパターンでは基本的に1音ずつしかドラムを叩かず、右手・左手・右足がすべてバラバラに動くリズムになっています。
それを楽譜にすると音符が縦に重ならず、1直線(リニア = Linear)になるという意味で付けられたドラムの演奏方法です。
1音ずつしか叩かないと聞くと自分みたいな素人には簡単そうに聞こえるけどリニアパターンの難易度はかなり高めらしく、パット・トーピー自身も、
『この曲のドラムのリズムは簡単じゃないよ。特にハイハットが難しいんだ』
というようなことを後に言ってます。
ちなみにドラムの難易度が高い曲として知られているのが、1928年にフランスの作曲家であるラヴェルが作ったクラシックの名曲「ボレロ」。
「ボレロ」のドラムは技術的にというより精神的に難しいことで有名な曲。
リズム楽器はスネアドラム(小太鼓)のみで、とにかくひたすら同じリズムで叩き続けなければならず、その時間はなんと16分間!
6秒くらいの短いリズムで、スネアドラムを16分間ひたすら叩き続けるという苦行のようなドラミング💦
スネアドラムの演奏者は曲が終わったらグッタリになって5kgくらいは痩せてるかもしれません…。
↓Youtube【Wiener Philharmoniker - Maurice Ravel - Bolero - Regente Gustavo Dudamel (HD)】
⑥遊び心のあるジャケット写真
Mr.BIGの2ndアルバム以降のジャケット写真が、ダジャレ風にアルバムタイトルになぞらえられていたというのは有名な話。
4thアルバム「Hey Man(ヘイ・マン)」ではアルバムのジャケット写真が『干し草の男』になっています。
アルバムタイトルの意味を知ってからジャケットを見ると面白いかもしれませんよ!
直訳すると『それに寄りかかれ』みたいな意味。1895年にフランスで事故を起こした実際の写真が使われています。
Bumpは『こぶ・衝突』、Aheadは『先に・前に』なので『前に段差があるから注意しろ!』っていうのがBump␣Aheadの意味。
Aheadの間にスペースを入れると Bump␣A␣headになるので、頭が地面から突き出したこんなジャケット写真になってます。
- Hey Man = やあ、調子はどうだい?
- Hay Man = 干し草の男
綴りは違うけど発音はどっちも「ヘイ・マン」なんですね。
意味は『すべて忘れて吹っ切る』とか『困難を乗り越える』。どっちにもとれそうなジャケット写真です(笑)
タイトルは『原寸大』『実測』という意味。小さい子供が大きな建物を軽々と抱えているのは風刺的なことなのかな?