①世界中で600万枚を売り上げる驚異的な…
2004年にリリースされたKeane(キーン)のデビューアルバム『Hopes and Fears』は、世界中で600万枚以上を売り上げる驚異的な大ヒットを記録しました。このアルバムは、2004年のUKで2番目に売れたアルバム(ちなみに1位はシザー・シスターズのデビュー作)であり、UKの21世紀に売れたアルバムランキングでも第9位(2011年7月時点)に輝くなど、数々の金字塔を打ち立てています。
その『Hopes and Fears』からのセカンドシングルとしてリリースされ、バンドの代表曲となったのが「Everybody's Changing」です。もともとこの曲は、インディーズ時代の2003年、ロンドンを拠点とするインディーズレーベル、フィアース・パンダ・レコードからリリースされていた曲。フィアース・パンダ・レコードといえば、コールドプレイ、スーパーグラス、ザ・ブルートーンズといった錚々たるバンドを初期に輩出した、まさに"目利き"とも言えるレーベル。しかし、Keaneはデビュー前でインディーズだったこともあり、この時の「Everybody's Changing」はUKシングルチャートで122位。ヒットとは程遠い順位に終わりました。
けれど、あまりにも美しく心を打つこの曲はすぐに音楽関係者の間で大きな話題に。その後、メジャーレーベルによるKeaneの争奪戦が過熱した結果、彼らはアイランド・レコードと契約。サウンドに磨きをかけて2004年に再リリースされた「Everybody's Changing」は、UKシングルチャートで最高4位を記録する大ヒットになったというわけなんです。
Youtube【Keane - Everybody's Changing (Official Music Video)】
②歌詞と和訳
You say you wander your own landBut when I think about itI don't see how you can
You're aching, you're breakingAnd I can see the pain in your eyesSays everybody's changingAnd I don't know why
So little timeTry to understand that I'mTrying to make a move just to stay in the gameI try to stay awake and remember my nameBut everybody's changingAnd I don't feel the same
You're gone from hereSoon you will disappearFading into beautiful light'Cause everybody's changingAnd I don't feel right
So little timeTry to understand that I'mTrying to make a move just to stay in the gameI try to stay awake and remember my nameBut everybody's changingAnd I don't feel the sameOhEverybody's changingAnd I don't feel the same
③ベン・フォールズ・ファイヴが登場して以来…
ピアノ、ベース、ドラムという、ギターのいないバンド編成。1995年にアメリカのベン・フォールズ・ファイヴが登場して以来、こうした“ギターレス・トリオ”は、ロックの一つのスタイルとして注目されるようになりました。
その流れの中で現れたKeaneも初めは編成の珍しさで注目された部分もあったのかもしれない。でも、それからすぐに彼らが多くのリスナーや音楽ライターから熱烈に支持されるようになったのは、それだけの力があったからこそ。
もしこの曲にギターが存在していたら?なんて考えたりもするけれど、もちろん素晴らしいギタリストが参加すれば、それはそれで良い曲になったかもしれない。一度聴いてみたい気もしないでもない。だけど結局はKeaneのオリジナルバージョンがベストだってことを再確認することになるだけなんだろうなぁ。
「Everybody's Changing」では、美しいピアノの周りを彩るようにきらめくシンセサイザーの音も聴きどころ。彼らのアンサンブルは、力強いリズムでぐいぐい引っ張っていくというより、あくまで美しい旋律とハーモニーが主役。
例えるなら『愛の吟遊詩人』とも称されたアル・スチュワートのように、物語を紡ぐ美しいメロディが印象的な、イギリスらしい叙情的なポップロック。そうした系譜を受け継ぎながらも古臭くなることなく、Keaneだけのオリジナルな音として多くのファンに受け入れられていったんでしょうね。
まるで満点の星空に吸い込まれていくような、きらびやかでどこか切ないこの世界観を出せるバンドは、そう多くはないんじゃないかな。
④その声は絹のように上質で滑らかな…
Keaneの音楽を語る上で欠かせないのが、フロントマン、トム・チャップリンの唯一無二の歌声です。
その声は絹のように上質で滑らかなシルキーボイス。カナダの歌姫サラ・マクラクランが好きな人には間違いなくハマる声質だと思います。透明感のある美しい歌声と、聴く人の心に深く染み入るような感情表現。二人の歌声はどこか似ているような気がします。
トムのクリアで伸びやかな声は本当に心地いいんだけど、特に心を掴まれるのはその繊細な声のコントロールと、感情の機微を伝える表現力。
例えば、ふとした瞬間に聴こえる、あの息が混じったような「エッジボイス」。ささやくように、すぐそばで語りかけてくるような親密な響きが、この曲のテーマである「変化への不安」や「どうしようもない切なさ」に、これ以上ないほど寄り添ってくれる気がしませんか?
これを意識して使っているのか、感情の高まりで自然とそうなるのかは分かりませんが、この声があるからこそ、この歌はぐっと深みを増すんだと思うんですよね。
高い歌唱テクニックをテクニックと感じさせず、ごく自然な感情表現として歌に溶け込ませてしまう…。トム・チャップリンというボーカリストの凄さはそこにあるのかも。