①第58回グラミー賞で最優秀…
1990年生まれ、イギリス出身のシンガーソングライター、James Bay(ジェイムス・ベイ)が発表したデビューアルバム『Chaos and the Calm』。
2015年リリースのこのアルバムは、第58回グラミー賞で最優秀ロックアルバム賞にノミネートされ、収録曲「Hold Back The River」も最優秀ロックソング賞にノミネート。イギリスのアルバムチャートで初登場1位を記録し、年間ランキングでも全体の8位に入る大ヒットに。新人アーティストのデビュー作としては、まさに異例の成功でした。
さらにこの時のグラミー賞では、生涯で一度しか受賞のチャンスがない難関の最優秀新人賞候補にも選出され、ジェイムス・ベイは一気にブレイクを果たします。
「Hold Back The River」は、そのデビューアルバムからの1stシングルとして2014年に発売された曲です。
ひとつひとつの音が丁寧に紡がれた哀愁あるギターの旋律。そして、まるで自分の人生を振り返り、一言一言かみしめるかのように歌うジェイムス・ベイの渋くて静かな迫力のある歌声。
心揺さぶる魂のバラードです。
Youtube【James Bay - Hold Back The River】
②歌詞と和訳
Songwriter(s)【James Bay / Iain Archer】
Tried to keep you close to meBut life got in betweenTried to square not being thereBut think that I should have been
Hold back the river, let me look in your eyesHold back the river, so ICan stop for a minute and see where you hideHold back the river, hold back
Once upon a different lifeWe rode our bikes into the skyBut now we're caught against the tideThose distant days are flashing by
Lonely water, lonely water, won't you let us wanderLet us hold each otherLonely water, lonely water, won't you let us wanderLet us hold each other
Hold back the river, let me look in your eyesHold back the river, so ICan stop for a minute and see where you hideHold back the river, hold back
Hold back the river, let me look in your eyesHold back the river, so ICan stop for a minute and see where you hideHold back the river, hold back
Lonely water, lonely water, won't you let us wanderLet us hold each otherLonely water, lonely water, won't you let us wanderLet us hold each other
「Hold Back The River」は直訳だと「川の流れを止める」ですが、この曲の中では「涙を止める」という意味で使われているんだと思います。
デビューアルバムに収録されている曲は、すべてジェイムス・ベイ自身の18歳~24歳までの人生をテーマに書かれているとのこと。
彼の歩んできた人生を想像しながら聴くと、歌詞がより深く感じられますね。
③僕が大切に思っている人たちとの…
『一緒に育った人たちに対する愛を歌った曲。クレイジーな忙しさを止めて、自分のペースを取り戻して、僕が大切に思っている人たちとの時間を過ごしたいという気持ちを伝えたかった。』
ジェイムス・ベイ自身がそう語るこの曲には、大げさなアレンジは感じられません。
静かな力強さを感じる前半から、だんだんと感情が高ぶっていき、せき止めていた気持ちがあふれ出すようなソウルフルなボーカルへと変わっていく。
初めてこの曲を聴いたとき、正確には歌詞の意味はわからないはずなのに、なぜか心に響いてしかたがない。
そして、歌詞の意味を知って、さらに心が熱くなる。
「涙を止めてくれ」と歌いながら、もう本人がすでに号泣しているんじゃないかと思ってしまうほど、最後のサビでのジェイムス・ベイのボーカルには強烈な哀愁が込められていて圧巻です。
パッと見はアコースティックギターの弾き語りっぽい雰囲気の人なんだけど、歌声は意外とロック寄りなんですよね。
泣きたい気持ちを無理に抑え込もうとしているような、そんな不安定な感情とリンクするような歌い方。かすかにビブラートがかかった声が、静かに、でもしっかりと胸に突き刺さりますね。
④11歳のとき、父親の勧めで聴いた…
ソウルミュージック好きの母親と、ローリング・ストーンズなどロックを敬愛する父親の間に生まれたジェイムス・ベイ。
11歳のとき、父親の勧めで聴いたデレク・アンド・ザ・ドミノス「愛しのレイラ」のイントロでギターに夢中に。
16歳になると、自分のギターで酔っぱらいを黙らせられるかを試すためにパブで弾き語りを始めるようになり、その後ロンドンのパブでの弾き語りが音楽関係者の目に留まってデビューを果たしています。
もしかしたら、「Hold Back The River」の後半のシャウト気味のボーカルスタイルは、感情を爆発させた「愛しのレイラ」に無意識に影響を受けているのかもしれません。
ジェイムス・ベイは、自分の作った曲を聴いたときに、幸せな気持ちになるか、悲しい気持ちになるかは問題じゃなくて、とにかく感動してほしいと語っています。
「Hold Back The River」の歌詞は、決して幸せな内容ではないかもしれません。
でも、この素晴らしいメロディとボーカルを聴くたびに、“自分の物語”のように感じてしまう。音楽ってすごいなと思わずにはいられません…。