①七色の声を持つと言われた…
「七色の声を持つ男」と言われたボーカリスト、ロビン・ザンダー擁するバンド、チープ・トリック。
ロック色の強いサウンドにビートルズを思わせるキャッチーな楽曲たち。そして、ロビンやトムの美少年的なルックスも手伝って、70年代後半から80年代にかけて数々のヒット曲を生み出しました。
特に日本での人気は凄まじく、日本武道館でのライブを収録したライブアルバム『At Budokan(チープ・トリックat武道館)』は日本で爆発的に売れ、その勢いがアメリカにも飛び火。逆輸入のかたちで全米4位を記録し、バンドはアメリカでの人気を不動のものにしていきます。
そんなチープ・トリックの曲の中で、私がいちばん思い入れのある一曲はもちろん、全米を泣かせたバラード「The Flame(永遠の愛の炎)」です。
この曲はボブ・ミッチェル、そしてアトミック・ルースターの元メンバーであるニック・グレアムによって提供されました。
チープ・トリックのメンバーは当初、この曲を「自分たちらしくない」と嫌い、ギタリストでメインソングライターのリック・ニールセンは録音の直前までレコーディングを拒否していたそうです。
ところが皮肉にも、この曲がバンド史上唯一の全米No.1ヒットに。
結果的に商業的低迷からの完全復活を果たすことになりますが、しばらくはライブで演奏することすら拒んでいたというエピソードも。彼らにとっては、それだけ複雑な思いがあったんでしょうね…。
Youtube【Cheap Trick - The Flame】
②歌詞と和訳
Songwriter(s) - Bob Mitchell, Nick Graham
Another night slowly closes inAnd I feel so lonelyTouching heat freezing on my skinI pretend you still hold me
I’m going crazy, I’m losing sleepI’m in too far, I’m in way too deep over youI can’t believe you’re goneYou were the first, you’ll be the last
Wherever you go, I’ll be with youWhatever you want, I’ll give it to youWhenever you need someoneTo lay your heart and head uponRemember after the fire, after all the rainI will be the flame
Watching shadows move across the wallFeels so frighteningI wanna run to you, I wanna callBut I’ve been hit by lightning
Just can’t stand up for fallin’ apartCan’t see through this veil across my heart over youYou’ll always be the oneYou were the first, you’ll be the last
Wherever you go, I’ll be with youWhatever you want, I’ll give it to youWhenever you need someoneTo lay your heart and head uponRemember after the fire, after all the rainI will be the flame
I’m going crazy, I’m losing sleepI’m in too far, I’m in way too deep over youYou’ll always be the oneYou were the first, you’ll be the last
Wherever you go, I’ll be with youWhatever you want, I’ll give it to youWhenever you need someoneTo lay your heart and head uponRemember after the fire, after all the rainI will be the flame
Whatever you want, I’ll give it to youWherever you go, I’ll be with youAnd whatever you want, I’ll give it to you
③イントロのギターのアルペジオから…
イントロが始まった瞬間からもう、狂おしいほどセンチメンタルな「The Flame」。
『売れ線すぎる』と離れていったファンもいたようですが、逆にこの曲でチープ・トリックにハマった人も少なくないと思います。私自身がまさにその一人。
『チープ・トリックらしいかどうか』はともかくとして、この曲が情感あふれる、時代を象徴するロックバラードの名曲であることは間違いありません。
イントロからサビまでの盛り上がり、いかにも80年代らしいサウンドが胸に染みわたってくるんです。若かったあの頃の記憶がよみがえり、思わず涙腺がゆるむような感覚。
ロビンの感傷的なハスキーボイスもまた絶妙で、ギターソロも決して派手ではないのに、不思議と心に残るんですよね。
この曲、本当に泣けます。
時が経ってから聴くと、思い出補正も相まって、もう二度と抜け出せないくらいの深い引力を感じることもあります。
④1980年にベースのトム・ピーターソンが…
1980年にベースのトム・ピーターソンが脱退して以降、バンドは人気に陰りが見えはじめます。
それ以降は、アルバムごとにプロデューサーを変えるなど試行錯誤の連続。気づけば、1979年に全米32位を記録した「Voices(ヴォイシズ)」以来、約8年間もTOP40ヒットが途絶えていました。
そんな中、所属レーベルのエピック・レコードが提案したのが、「外部ソングライターの曲でヒットを狙う」こと。
この頃は、ハートが1985年にアルバム「Heart」で、スターシップが同じく1985年にアルバム「フープラ」で、エアロスミスが1987年にアルバム「パーマネント・ヴァケイション」で、外部作家の楽曲でチャートにカムバックする動きが起こっており、チープ・トリックにもその流れが求められたのです。
ちょうどそのタイミングで、トム・ピーターソンがバンドに復帰。
そうして多くの外部ソングライターを迎えて完成したのが、1988年のアルバム『Lap of Luxury(永遠の愛の炎)』でした。
ちなみに、収録曲の中でバンドメンバーだけで作られたのは、5曲目の「Never Had a Lot to Lose(ネヴァー・ハド・ア・ロット・トゥ・ルーズ)」のみ。徹底して “売れる” ことを意識した1枚だったことが伺えます。