①Last Christmas (ラストクリスマス)で一躍スターダムに
George Michael(ジョージ・マイケル)の名前を聞いたことがなくてもクリスマスソングの大定番曲、Wham!(ワム!)の「ラストクリスマス」は知ってる人が多いんじゃないでしょうか?
ジョージ・マイケルはWham! の音楽面を担当していたミュージシャンで、もちろんラストクリスマスのプロデュース・作詞作曲もジョージ・マイケル。
残念ながら2016年に亡くなってしまいましたが、その日が奇しくも12月25日のクリスマスだったことは彼が生まれながらのスターだったことを物語っているような気がします。
そのジョージ・マイケルが Wham! 解散後の1987年にリリースしたソロデビューアルバム「FAITH」はアメリカ、UKの両方で1位を記録した大大大ヒットアルバム。
このアルバムからは5枚のシングルがリリースされ、アメリカでは1stシングルの「I Want Your Sex」が2位、2ndシングル以降の「Faith」「Father Figure」「One More Try」「Monkey」までの4曲が立て続けにNo.1に輝きました。
このアルバムの中で私が特に好きな曲は4曲目の「One More Try (ワン・モア・トライ)」。
1988年にアルバムからの4thシングルとして発売され、全米1位、UKで8位を記録したheavenlyなゴスペル風のバラードです。
↓Youtube【George Michael - One More Try】
②PV映像に込められた孤独のメタファー(隠喩)
ワン・モア・トライはWham! 時代のアイドル的な曲調やボーカルスタイルとは違うソウルフルな歌唱と、シンプルかつ荘厳な演奏がすべてのストレスから解放してくれると思えるほど優しく美しい曲。
歌詞は恋愛に傷ついた若者が次の恋愛に踏み出すことにためらい、悩んでいるという葛藤を歌った内容だけど、日常生活や仕事で疲れ切った時に聴いても確実に癒されるんじゃないかなと思います。
曲を包んでいるすべてのメロディがとにかく神々しくて、曲を聴いている間はずっと放心状態…。
そして聴き終わった後に残るのは温かい気持ちなんだけどなぜか泣きたくなるような不思議な感情なんですよね。
ジョージ・マイケルが感情を振り絞るようにして歌っている姿がメインのPVも『光と影』『白と黒』だけで表現されたような世界観で、まさに至上の美しさ。
この映像に映し出されている『窓から差し込む灰色の光』『バスルームのガラス扉にハートを描こうとするけど描き切ることができない』といったシーンや、2番終わりの間奏での『家具にはドレープが掛けられ、白いレースのカーテンがひかれている』シーンなどは孤独の隠喩なんだそうです。
個人的にはワン・モア・トライを聴くときはライブ映像よりもこのPVを見ながら聴くことをおすすめしたいですね。
③ジョージ・マイケルがまだ24歳の時の曲
ワン・モア・トライの曲の長さは、あのクイーンのボヘミアン・ラプソディとほぼ同じ6分弱。これは当時のシングルとしてはかなり長い部類なんじゃないでしょうか。
だけど曲の構成はとてもシンプル。なのに聴いている時間が長く感じることはなく、あっという間に最後の歌詞までたどり着いてしまいます。
でもたぶんあと一度だけはやってみるかもしれないけれど…
ラストのこの部分の歌詞は、さんざん泣いて、落ち込んで、もう恋愛なんてしたくないと打ちのめされていた主人公が、それでも次こそはいい恋愛ができるかもしれないという希望が感じられる最高のエンディングだと思います。
聴く人の心を強く惹きつけるこの曲の引力はジョージ・マイケルの圧倒的な歌のうまさによるところが大きいんでしょうけど、この時の彼はまだ24歳。
しかもなんとWikipediaによるとワン・モア・トライは8時間以内に作詞作曲され、レコーディングされ、完成したという…。
これだけの名曲をそんな短時間で完成させたというのがほんとなら、凄まじい才能ですよね。
神がかっているとしか思えません。
④Careless Whisper (ケアレス・ウィスパー)とは比較にならない?
ワン・モア・トライはジョージ・マイケルの心に極めて近い感情を表しているという理由からジョージ・マイケル本人も自伝で『最高傑作』であると語っており、リリースから数年間ライブやコンサートで好んで歌われ続けてきた曲です。
ジョージ・マイケルのバラードと言えば1984年にアメリカ、UK両方で1位を記録したビッグヒット「Careless Whisper(ケアレス・ウィスパー)」が好きという人も多いと思いますが、彼自身はケアレス・ウィスパーは感情的に何の意味も持たないと言い切っています。
↓Youtube【George Michael - Careless Whisper (Official Video)】
ケアレス・ウィスパーも絡みつくようなサックスの音色が素晴らしいセクシーな名曲だと私は思うんですけど、それでも彼にとってはワン・モア・トライとは比べる対象にすらならないとのこと。
ちなみにこのムーディーなバラード、ケアレス・ウィスパーの原型が作られたのはジョージ・マイケルが17歳の時なんだそうです。
このルックスでこの作曲能力と歌唱力。『天は二物を与えず』には例外があるんですね…。
⑤架空のヒーロー『ジョージ・マイケル』
ちょっと意外かもしれませんが、ジョージ・マイケルという名前は本名ではありません。
発音の仕方によってカタカナ表記は変わってくると思いますけど、本名は『ヨルゴス・キリアコス・パナイオトゥー』というあまり聞きなれない名前です。
というのもジョージ・マイケルの両親はギリシャ出身。
後にイギリスのロンドンに移住したのちに生まれたのがジョージ・マイケルで、ミュージシャンとしてスターダムに上がった姿からは想像できないかもしれませんが実は子供の頃からかなり内気な少年だったそうです。
そのためいつしか自分の中で架空のヒーローを創り出すようになり、その名前が『ジョージ・マイケル』。
時を経てミュージシャンとしてデビューした際に、スポットライトを浴びるその存在はもう一人の架空の自分であるからという理由から『ジョージ・マイケル』を名乗るようになったとのこと。
正直そんな深い意味が込められた名前だとは思わなかったし、大スターのジョージ・マイケルが少年時代は架空の存在を作りだすほど内気だったことにも驚きでした。
⑥「ワン・モア・トライ/ジョージ・マイケル」歌詞の和訳
↓Songwriter【George Michael】
I've had enough of dangerAnd people on the streetsI'm lookin' out for angelsJust trying to find some peace
わずかな安らぎが欲しくて
Now I think it's timeThat you let me knowSo if you love meSay you love meBut if you don'tJust let me go…
黙って僕を行かせてほしい…
※'Cause teacherThere are things that I don't want to learnAnd the last one I hadMade me cry
それは僕が泣きたくなるようなことだった
★So I don't want to learn toHold you, touch youThink that you're mineBecause it ain't no joyFor an uptown boyWhose teacher has told him goodbye, goodbye, goodbye
そんなこと少しも嬉しくないんだから
When you were just a strangerAnd I was at your feetI didn't feel the dangerNow I feel the heat
今では心が熱くなるんだ
That look in your eyesTelling me "No"So you think that you love meKnow that you need meI wrote the song, I know it's wrongJust let me go…
だから僕を行かせてほしい…
(繰り返し ※)
(繰り返し ★)
So when you say that you need meThat you'll never leave meI know you're wrong, you're not that strongLet me go
だからもう僕を行かせてほしい
And teacherThere are things that I still have to learnBut the one thing I have is my prideOh, so I don't want to learn toHold you, touch youThink that you're mineBecause there ain't no joyFor an uptown boyWho just isn't willing to try
そんなこと少しも嬉しくないんだから
I'm so cold insideMaybe just one more try
でもたぶんあと一度だけはやってみるかもしれないけれど…