①90年代後半、グランジの熱気が…
90年代後半、グランジの熱気が少し落ち着いた頃、ある曲がアメリカのチャートを駆け上がりました。その曲のタイトルは「Counting Blue Cars」。アメリカのオルタナティブロックバンド、Dishwalla(ディッシュワラ)は1996年、この曲で一躍ブレイクし、全米シングルチャートで最高15位を記録しています。
でもこの名曲、当時の日本では今以上に驚くほど知られていなかったんですよね…。
「Counting Blue Cars」には、いわゆる派手さとかキャッチーさはありません。けれど、聴くほどに味わいが増す、そんな魅力に溢れています。ファルセットを織り交ぜたボーカルは切なく響き、少しノイジーながらも心地よいギターサウンドが全体を包み込みます。サビに入る直前、レディオヘッドの名曲「Creep」を彷彿とさせるような、一瞬の静寂から鳴り響くギターにハッとさせられた人もきっと多いはず。
ただ、当時の日本では国内盤はおろか、輸入盤ですらなかなか手に入らず…。今みたいにAmazonもなかったですからね。東北の地方都市に住んでいた私は、どうしてもこの曲が聴きたくて、東京へ遊びに行った際に渋谷のタワーレコードで輸入盤シングルをやっとの思いで発見しました。あのときの「あった!」という瞬間の感動は、今でもはっきり覚えています…。
Youtube【Dishwalla - Counting Blue Cars (Official Video)】
②歌詞と和訳
Songwriter(s) - S.Alexander, R.B.Cravens, G.Kolanek, J.R.Richards, G.Pendergast
Must have been mid afternoonI could tell by how far the child's shadow stretched outAnd he walked with a purpose in his sneakers, down the streetHe had many questions like children often do
He said, "Tell me all your thoughts on GodAnd tell me am I very far?"
Must have been late afternoonOn our way the sun broke free of the cloudsWe count only blue cars, skip the cracks in the streetAnd ask many questions like children often do
We said, "Tell me all your thoughts on God'Cause I would really like to meet herAnd ask her why we're who we are
Tell me all your thoughts on God'Cause I am on my way to see herSo tell me am I very far, am I very far now?"
It's getting cold picked up the paceHow our shoes make hard noises in this placeOur clothes are stained, We pass many cross-eyed peopleAnd ask many questions like children often do
Tell me all your thoughts on God'Cause I would really like to meet herAnd ask her why we're who we are
Tell me all your thoughts on God'Cause I am on my way to see herSo tell me am I very far, am I very far now?
神が「Her」、つまり女性として描かれている点については、様々な反響があったと言われています。
伝えられるところによると、バンドのリードシンガーであるJ.R.リチャーズは、この歌詞について、子供の純粋な視点から神の多様なあり方を捉えようとしたものであり、「なぜ神はいつも男性として語られなければならないのか?女性であってもいいはずだ」という考えが根底にあったようです。
しかし、このユニークな歌詞表現は、一部の人々にとっては受け入れ難かったようで、非常に強い反発を招き、中には過激とも言える脅迫的な反応を示すケースもあったという話も聞かれます。
実際にどこまで過激な反応があったのかはわからないけど、歌詞の解釈の仕方によって捉えられ方が全然変わってくるというのは、言葉や音楽が持つ影響力の大きさを感じますね。
③最高位15位を記録したけれど…
「Counting Blue Cars」は全米シングルチャートで最高15位を記録しましたが、実はそれだけではありません。ロックというジャンルにおいては、メインストリームロックチャートとモダンロックチャートの両方で1位を獲得しているんです。当時のロックシーンの中でも、この曲がいかに多くのリスナーに支持されていたかがうかがえます。
さらに、音楽業界からも高く評価されました。アメリカの著作権管理団体ASCAPが主催するASCAPアワードでは、1997年と1998年の2年連続で「ロック・トラック・オブ・ザ・イヤー」を受賞するという快挙も達成しています。
そして少し意外なところでは、映画でもこの曲のメロディを聴くことができます。1995年にアメリカで公開された映画『Empire Records(エンパイア・レコード)』の劇中で使われているんです。ただ、この映画には非常に多くの楽曲が使用されていたこともあり、残念ながらサウンドトラックには収録されませんでした。もし本編の中でこの曲に気づけたとしたら、ちょっとした発見かもしれませんね。
④バンド名である「Dishwalla」は…
バンド名「Dishwalla」は、ちょっと聞き慣れない言葉ですよね。実はこれ、ヒンディー語に由来していて、「dish(アンテナ)」と「walla(〜屋さん、〜を扱う人)」を組み合わせた造語なんです。つまり、衛星放送を家庭に届ける人を指す言葉なのだとか。
彼らは当初「Dish」という名前で活動していましたが、同名のバンドがすでにいたため、「Dishwalla」というユニークな名前に変更したそうです。
この「Dishwalla」という名前に込められた意味を想像してみると、アンテナを通じて放送を届ける人というイメージから、「自分たちの音楽を、遠くにいる誰かの心にまで届けたい」という願いがあったのかもしれません。ちょうど情報化社会が加速し始めた時代だったので、きっとそんな時代背景もバンド名に影響したんでしょうね。