それは人は絶対にいつか死ぬということ。
音楽が好きな方であれば、いつか自分が死ぬことがあれば大好きな曲で見送って欲しいと思ったことは1度はあるんじゃないでしょうか?
- 人生の終わりや、死を連想させる歌詞が出てくる曲
- 病気が原因で近づいてくる死をテーマにした曲
- 幼い頃の記憶を歌った歌詞とノスタルジックなメロディが幸せな走馬灯のように感じられそうな曲
- 大切な友達(ペット)や、自分と境遇が似ている人の死を悼んで作られた曲
ということで今回は、自分が死んだときにはこんな曲をかけてもらえたらちょっとは感動的な葬式になるんじゃないかな、と思う思い入れの深い洋楽をまとめてみました。
中には歌っているアーティストが『死』をイメージして作ったわけではない曲も何曲か含まれてます。
メロディから感じる悲哀や、私の個人的な歌詞の解釈で今回の一覧に入れさせてもらいました。
① Cancer(キャンサー) / My Chemical Romance (マイ・ケミカル・ロマンス)
3rdアルバムのThe Black Parade(ザ・ブラック・パレード)が2006年に全英、全米の両方で最高2位の大ヒットを記録したマイ・ケミカル・ロマンス。
ザ・ブラック・パレードは全曲を通して、若くして癌(ガン)になった男性の死生観を歌っているロックオペラ。Cancer(ガン)という病名そのものがタイトルになっているこの曲はアルバムの中でも最も歌詞が具体的で、深く感情移入してしまう、ファンからの人気が高い曲です。
CDの収録時間は2:22秒しかない短い曲だけど、日本語訳を見たあとで聴くと泣きそうになるくらい主人公の気持ちに共感してしまう。
ジェラルドの感傷的なボーカルも素晴らしく、死ぬことへの覚悟と無念さがあふれ出ているような悲しくもエモーショナルな曲で、死をテーマにしたバラードとしては歴史に残る名曲だと思います。
唇が荒れて感覚が無くなってきたんだ
そして僕の好きだった服を着せて埋葬してくれ
だって一番つらいのは君たちを残して逝くことなんだから
体中の毛が抜け落ちてしまった
ベイビー、僕はただ化学治療のせいでぐったりしているだけだよ
どうかわかって欲しい
どうか心からのさよならを言ってほしい
だって一番つらいのは君たちを残して逝くことなんだから
② A Song for You(ア・ソング・フォー・ユー) / Leon Russell (レオン・ラッセル)
カーペンターズ、シンプリー・レッド、レイ・チャールズ、ホイットニー・ヒューストン、ジョー・コッカ―など多くのミュージシャンにカバーされた世紀の名曲です。同じピアノマンスタイルのビリー・ジョエル、エルトン・ジョンとは全く違う、レオン・ラッセルにしか出せない世界観を持った曲。
ほとんどピアノだけのシンプルなメロディだけど、唯一無二、空前絶後と言ってもいいくらいの渋さがあります。感情を込めて歌うのが上手いアーティストはたくさんいるけど、レオン・ラッセルのようなボーカルスタイルで感情を表現できる人はなかなかいないんじゃないでしょうか?
好みがかなり分かれそうなほどクセが強いレオンの声質と、わざとテンポをちょっとずらしたような独特な歌唱。もともとはステージに立つシンガーの気持ちを歌ったラブソングなんですけど、レオンの絞り出すようなかすれた声で歌われる、
そして わたしの人生が終わる時には
わたしたちが 一緒だった時を忘れずにいて
という歌詞には、なぜか自分が死ぬときの気持ちを想像してしまいます。
③ Musty Dusty(マスティ・ダスティ) / Sagittarius (サジタリアス)
ソフトロックの世界では天才的なコーラスアレンジで、あのビーチボーイズの頭脳ブライアン・ウィルソンと肩を並べるほどの存在だったカート・ベッチャー。そしてそのビーチボーイズと楽曲をいくつか共作していたゲイリー・アッシャーの2人が中心になっているバンドがサジタリアスです。
Musty Dusty = カビ臭くてほこりっぽい
というような意味のタイトルのこの曲は、サビもなくずっと同じメロディが続くけど、曲が進むにつれてどんどん演奏とハーモニーが厚みを増して荘厳になっていきます。地味とも言えるほどシンプルなこの曲を覆いつくしているのは、とてもドリーミーでノスタルジックな懐かしい雰囲気。
子供のころ遊んだおもちゃとかぬいぐるみはボロボロで、オルゴールは音楽を奏でなくなってしまった…。あの頃に見ていた楓の木、蝶やミツバチといった懐かしい光景は今はもう消え去ってしまった…。歳をとった自分が幼かった頃を思い出しているというレトロでセンチメンタルな歌詞。
そういった歌詞と優しく温かいメロディが、なんとなく人生が終わる間際の幸せな走馬灯のような感覚になります。生前には今ほどの高い評価を受けられず、1987年に43歳という若さで他界してしまったカート・ベッチャーの気持ちを想像するとなおさらこの曲に特別な感情を抱いてしまいます。
人生の終わりをイメージして作られた曲ではないんでしょうけど、自分の葬式ではこの曲で号泣してもらえたら…と聴くたびに想像する曲です。
ぼろぼろで、そして破れてもいる
音程が狂った小さなブリキのホルン
僕の思い出は、全部粉々になって消え去ってしまった
④ Dust in the Wind(風に舞うほこり) / Todd Rundgren (トッド・ラングレン)
ポップオタク、トッド・ラングレンのアルバムの中でも名盤との呼び声が高いアルバム、Something/Anything?(サムシング/エニシング?)。A面~D面まで異なるテーマを持つカテゴリーで区切られたアルバムで、そのD面はスタジオミュージシャンを集めてライブ形式の一発撮りでレコーディングされています。
Dust in the Windは、ひりひりするくらい感傷的なトッドの歌声、間奏のむせび泣くようなトランペットの音色、取り残されたような孤独感・絶望感を感じる歌詞にどっぷりと浸って抜け出せなくなる、悲哀に満ちたバラード。
『Dust = (人間の)遺骨,死体, (ちりに帰るべき)肉体』という意味があること、歌詞のところどころが人生を総括しているような内容に感じられることもあって、どうしても無意識のうちに『人生の終わり』を想像してしまうのかもしれません…。
君は僕がまだ君を愛していることを信じくちゃいけないんだ
そして僕の体は意志を失ってしまった
わかっているんだ、僕を乗せる船はやって来ないことを
そこにはただ風に舞うほこりが見えるだけ
⑤ All Dead, All Dead(オール・デッド) / Queen (クイーン)
クイーンのギタリストであるブライアン・メイが亡くなった猫を悲しんで作った曲。このアルバム、世界に捧ぐのバージョンはピアノもギターもブライアンで、フレディはバックボーカルのみで参加しています。
クイーンの曲の中でも最も暗く、私が聴いてきた全洋楽の中でもトップレベルの暗い雰囲気を持った曲かもしれません。でもイントロのピアノの旋律は悲しさと美しさが共存した素晴らしいメロディだし、all dead, all deadの地味ながらも胸に響くハーモニーは抗いようもないほど感動的。
極めつけは、神々しい光と共に神が天から降臨したかのように美しく荘厳な間奏のギターの音色…。地味でシンプルなアレンジで助長された物悲しさが涙を誘う名曲です。
死の瞬間は誰にでも同じくやってくる
でも僕は希望を持って生きていくよ
▼ちなみにフレディがボーカルの別バージョンもあります。そちらは冒頭に以下の歌詞が追加されています。
どれだけ長い間とどまり続けるんだ…
⑥ Angel(エンジェル) / Sarah McLachlan (サラ・マクラクラン)
この曲は、世界的オルタナティブロックバンド、ザ・スマッシング・パンプキンズのツアーに参加していたキーボーディストがヘロインの過剰摂取によりなくなったことを悲しんで作られました。
自分(サラ)はヘロインを使ったことはないけど、他のたくさんのことをプレッシャーから逃げるためにしてきたことで、なんとか今の自分がある。音楽で生きていく人間ならではのプレッシャーに耐えようとしてヘロインに手を出し亡くなってしまったことについて、サラは自分も同じような状況に置かれていたことを思い、深く共感したそうです。
幻想的に響くサラの歌声は、まさにタイトルにもなっている天使を思わせる美しさ。その優しい歌声と悲しくも崇高なメロディに身をゆだねていると、純白のシルクで全身を優しく包まれているような穏やかな気持ちになってしまう…そんな感覚に陥る至上の曲です。
エアロスミスのヒットシングルWalk This Wayをカバーしたことで有名なRun–D.M.C.のメンバー、ダリル・マクダニエルズは1997年の日本ツアーの時に鬱に苦しんで、毎日自分をどう殺すか真剣に悩んでいた時期があったそうです。しかし、
「Angelは嵐の中、俺に投げられた救命具のようなものだった。水の中から引き上げることはできないけど、助けが来るまで浮かんでいることができたんだ。」
後にそう語るほどサラのAngelをラジオで聴いて心をうたれ、命を救われたと語っています。
ここから飛び立つの
そしてあなたが恐れる終わりのない恐怖から