①ジャマイカ出身のレゲエミュージシャン…

ジャマイカ出身のレゲエミュージシャン、ジミー・クリフが「Many Rivers To Cross(遥かなる河)」を書いたのは、まだ21歳だった1969年のこと。その年にリリースされた彼のアルバムに初めて収録されたこの曲は、彼自身が主演した1972年の映画「The Harder They Come (ハーダー・ゼイ・カム)」でも使われ、多くの人の心に深く刻まれました。

 

レゲエのリズムで多くのファンの心を躍らせてきたジミー・クリフですが、神々しさと深い悲しみが溶け合ったようなオルガンのイントロで始まるこの曲からは、レゲエのリズムは感じられません。だけど、レゲエが無くともジミー・クリフはやっぱり偉大なミュージシャン。時代やジャンルを超えて感情を揺さぶるこんな名曲を生み出すことができるんだから。

 

10代でイギリスに渡ったジミー・クリフは、仕事や生活で様々な苦労を経験し、自分がどこにいるのか、何者なのかと悩んだ時期もあったそうです。将来に希望を見いだせず、苦難の波に押しつぶされそうになっていた若い彼の気持ちが込められた歌詞には、聴いていると胸が締め付けられるほどの重みがあります。今、なんだか心が晴れないと感じている人や、人生の壁にぶつかって苦しんでいる人は、この曲を聴いているうちに、きっと涙がこぼれてしまうかもしれません…。

 

Youtube【Many Rivers To Cross】

 

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②歌詞と和訳

Songwriter(s) - Jimmy Cliff
Many rivers to cross
But I can't seem to find my way over
Wandering I am lost as I travel along
The white cliffs of Dover
越えなければならない河が沢山ある
だけど向こう岸へ辿り着く道が見つからない
俺は迷ってしまったのだろうか
まるで白いドーバーの崖に沿って
ただ彷徨っているようだ
Many rivers to cross and it's only my will
That keeps me alive
I've been licked, washed up for years and
I merely survive because of my pride
越えなければならない河が沢山ある
俺を生かしているのは
ただ、この意志だけだ
何年も 打ちのめされ
疲れ果ててしまったけれど
プライドだけで生き延びられた
And this loneliness won't leave me alone
It's such a drag to be on your own
My woman left and she didn't say why
Well I guess I have to try
孤独が俺を離してくれない
一人で荷物を背負うことにうんざりしてるのに
彼女も何も言わずに俺を置いて行った
こんな時、俺は泣くべきなんだろうか
Many rivers to cross but just where to begin
I'm playing for time
There'll be times I find myself thinking
Of committing some dreadful crime
越えなければならない河が沢山ある
でも、始めるべき場所で
俺はただ時間を無駄にしている
恐ろしい罪を犯すことさえ考えてしまう
そんな自分を何度も見てきた
Yes I’ve got many rivers to cross
But I can't seem to find my way over
Wandering I am lost as I travel along
The white cliffs of Dover
そうさ、俺には越えなければならない河が沢山ある
でも、その道を見つけることができそうにない
道に迷い、途方に暮れる
まるで白いドーバーの崖に沿って
ただ彷徨っているみたいだ

 

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③落ち込んだ時、元気を出したくて…

落ち込んだ時、元気を出したくて、とにかく明るい曲を聴こうとすることってありませんか? 自分に合った音楽を聴くことは、まるで心の鎮痛剤のように効果があると言われるけれど、気分が沈んでいる時に無理やり明るい曲でテンションを上げようとするのは、心理学的にはかえって逆効果になることがあるそうです。

そんな時は、無理に心を奮い立たせるのではなく、そっと寄り添い、感情を解き放ってくれる音楽が必要。「Many Rivers to Cross」は、まさにそんな一曲。無理に元気を出させようとするのではなく、心の奥底にそっと語りかけ、深い共感と温もりで包み込んでくれます。

音楽の好みは個人的な記憶と深く結びついていると言われています。『これを聴けば誰もが元気になる!』という魔法のような曲は無いですよね。だから、心が沈んでいる時には無理にテンションを上げるのではなく、悲しみや孤独にそっと寄り添い、大きく包み込んでくれる音楽こそが癒しになるのかもしれないですね。

 

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④ひたすらに美しいメロディと…

ひたすらに美しいメロディとソウルフルな歌声に惹かれて、最初はぼんやりと聴いていたようにも思う「Many Rivers to Cross」。けれど、歌詞を翻訳して深く理解した瞬間、この曲の持つ途方もない凄みに言葉を失いました…。

この曲は、光を探し続ける人間の内なる叫び。茨の道を掻き分け、それでも明日を信じた、全ての旅人のための旋律。彷徨いながらもその足を進めることを諦めなかった、全ての魂への鎮魂歌なのです。

人生って、穏やかな川の流れのように、心地よく過ぎていく時もあれば、予測不能な激流に巻き込まれるような時もありますよね。喜びの絶頂に立たされて、世界がキラキラ輝いて見えることもあれば、深い悲しみの底に突き落とされて、何もかも色褪せてしまうように感じることもある。それこそが私たちが生きている証なのかもしれません。

表面的な感動ではなく、歌詞に込められた深いメッセージを理解した時、言葉にならない感情が溢れ出し、涙が頬を濡らすことでしょう…。

 

⑤オリジナルよりも耳なじみのある…

「オリビア・ニュートン・ジョン - Country Roads」「ジョン・レノン - Stand By Me」「ボーイズ・タウン・ギャング - Can't Take My Eyes Off You」「カーペンターズ - Close to You」「ホイットニー・ヒューストン - I Will Always Love You」などなど、オリジナルよりも耳なじみのあるカバー曲はたくさんあります。

しかし、「Many Rivers To Cross」だけは、どうしてもジミー・クリフでなければならないと感じてしまいます。仕事、人生、自身の存在意義に深く苦しみ、故郷を遠く離れたイギリスで希望がゆっくりと萎むのを感じた過去を持つジミー・クリフ。彼の声を通してこそ、この歌は深く響く。そう思いませんか?

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