①グランジがチャートを賑わせていた90年代…
オルタナティブロックやグランジが音楽チャートを賑わせていた90年代。そんな時代を語る上で欠かせないバンドのひとつが、ダイナソーJr.です。
ノイズを効かせたラフなギターサウンドにもかかわらず、メロディは意外とキャッチー。荒っぽいのにどこか親しみやすくて、オルタナ・グランジ世代にとってはまさにカリスマ的な存在でした。
そのダイナソーJr.のフロントマン、J.マスキスが2000年にリリースしたアルバム『MORE LIGHT』。このアルバムの幕開けを飾る「Sameday」が、とにかくいいんです。
ダイナソーJr.時代を思わせる歪んだギターはそのままに、全体的には少しだけパワーポップ寄り。いい意味で肩の力が抜けた、軽やかな雰囲気に仕上がっています。
そして何より、耳に残るのがこの個性的な歌声。
しゃがれてるけど、「ハスキー」とか「渋い」とも少し違う。どこか眠たそうで、ちょっとやる気がなさそうにも聞こえる。なのに妙にクセになるんですよね。
少し憂鬱な空気をまといながらも「まあ、もういいや」って全部放り出したような、そんな投げやりさが不思議と心地いい1曲です。
Youtube【J Mascis + the Fog - Sameday】
②歌詞と和訳
songwriter - J Mascis
I woke up suddenly you're the one I loveIt's the sameday it's the samedayI got pissed but it's God who gave me this
On the sameday it's the sameday
Better be grateful sonIt's you who wanted my lifeHere's what you asked forDo your best don't mess with my life
Dreamed a picture sent to meCouldn't hold it that was my lifeIt's sad, it's sad to know you're colder
でも持っていられなかった それが俺の人生
悲しい キミの冷たさを知るのが悲しいよ
Piece together you and meThe gift means everything to my lifeBe glad be glad that no one told you
Rain on now that was my lifeBring them where they ought to beMake a pile and call it my life
Lock the door and hit the floor groanthat was my lifeNow look at everything it's beautifulthat's my life
All a dream you can tell me what I meanIt's the sameday it's the samedayJudgements off gotta go with my first thoughOn the sameday it's the sameday
Dreamed a picture sent to meCouldn't hold it that was my lifeIt's sad, it's sad to know you're colder
Piece together you and meThe gift means everything to my lifeBe glad be glad that no one told you
Rain on now that was my lifeBring them where they ought to beMake a pile and call it my life
③ニルヴァーナからドラマーとして誘われ…
ダイナソーJr.では、ボーカルとギターを担当しているJ.マスキス。
実はドラムもかなり叩けるマルチプレイヤーで、なんとあのニルヴァーナから、デイヴ・グロールが加入する前にドラマーとして誘われたことがあるんだとか。
本人もこのエピソードについて語っていて、2012年のインタビュー(Spin誌)では、「当時は自分たちの方がニルヴァーナよりも大きなバンドだったから、あまり深く考えなかった」らしいです。
今のニルヴァーナのイメージからすると信じられないような話だけど、それだけ当時のダイナソーJr.の存在感が強かったってことですよね。
ちなみに『MORE LIGHT』では、ほとんどすべての楽器をマスキス一人で演奏しています。
「+ THE FOG」という名前は「なんとなくカッコよかったから付けた」だけとのことなので、このアルバムは実質的にはソロ作品なんですね…。
ところで、なかなか日本人には聞き慣れない「J Mascis」という名前。
アルファベット表記のままだと読み方に迷いますが、日本語では「マスキス」や「マスシス」と書かれていることもあります。Wikipediaでは「マスシス」になってたりしますね。
でも、英語圏での発音やワーナーミュージックの表記を見る限り「マスキス」が正しそうです。
④ニールヤングからの影響を受けて…
ちょっと意外かもしれませんが、J.マスキスはニール・ヤングからの影響を受けていることを公言しています。
最初は「そんなに似てるかな?」と思っていたんですが、ギター1本で弾き語っている映像を見たときにちょっと納得。
鼻にかかったような、少し寂しげな声。渋さもあるし、どこか孤独で、それでもじんわり心に残る歌い方。あの哀愁は、たしかにニール・ヤングっぽさを感じさせるかも…。
ちなみにマスキスは、ニール・ヤングのトリビュートアルバム『The Bridge: A Tribute to Neil Young』にダイナソーJr.として参加した際、なんと自分では歌わず、素人の友人にボーカルを任せたという逸話があります。
理由ははっきり語られてはいませんが、もしかしたら、自分が歌うのはおこがましいと思ったのかもしれません。あるいは、マスキス流のちょっとひねくれたジョーク?
歌のうまさや完成度よりも、そういう不器用だけどちゃんと敬意のこもったやり方で、ニール・ヤングへのリスペクトを表現した…なんてこともあるのかもしれませんね。