①デビューアルバム発売前の大ヒット曲
Procol Harum(プロコル・ハルム)は1967年に結成されたイギリス(イングランド)のロックバンド。クラシックをロックと融合させたプログレッシブロックの先駆者として、半世紀以上が経過した現在でも評価が高いバンドです。
代表曲であるシングル「A Whiter Shade of Pale(青い影)」は、まだデビューアルバムがリリースされる前の1967年に発表された曲で、アメリカで5位を記録。
イギリスではビートルズの「All You Need Is Love(愛こそはすべて)」にその座を明け渡すまで6週連続で1位をキープし、世界中で1000万枚以上を売り上げました。
イントロの荘厳で温もりのあるオルガンの旋律は、初めて聴いた瞬間から二度と忘れられなくなるくらい印象的。
全編を包み込んでいるピアノとの二重奏は放心状態になってしまうほど美しく、ゲイリー・ブルッカーの寂しさを感じる渋い歌声も感動的。
50年以上も前の曲とは思えない、タイムレスに愛され続けている名曲です。
↓Youtube【PROCOL HARUM - A Whiter Shade Of Pale - promo film #1 (Official Video)】
②ビートルズのジョン・レノンも絶賛
「青い影」は、バッハのカンタータ第140番「目覚めよと呼ぶ声あり」にインスパイアされて描き上げたと言われています。
でも、イントロから曲の雰囲気を決定づけているオルガンの旋律は同じくバッハの「G線上のアリア」からの引用なので、むしろそちらからの影響を強く感じます。
この曲は発表された当時、あのジョン・レノンが「この曲以外は聴く価値がない」「人生でベスト3に入る曲」と発言するほど評価していた曲としても有名です。
曲の素晴らしさを裏付けるかのように、2009年にイギリスのBBCが発表した「過去75年間、イギリスで最もラジオで流れた曲」では、最もリスナーが多いRadio2のカテゴリーで1位を獲得。
このときの2位はクイーンのBohemian Rhapsody。5位は16週連続No.1でギネスにも載ったブライアン・アダムスの(Everyhthing I Do) I Do It For Youだったわけですから、プロコル・ハルムの凄さがわかりますね。
そして数多くのカバーバージョンが存在することも、この曲が時代を超える名曲であることを物語っています。
CD化されているものとしては「サラ・ブライトマン」「マイケル・ボルトン」「アニー・レノックス」などのカバーがおすすめ。
また、この曲は日本では日産シルビアS13型のCMソングに起用されたことからファンが多く、ミュージシャンの松任谷由実さんも創作の原点となった出逢いとしてこの曲をよく挙げています。
③「青い影」で一躍スターダムに駆け上がったけれど…
荘厳で叙情感たっぷりなプロコル・ハルムのデビューシングル「青い影」は瞬く間に世界的なヒットとなり、デビューアルバムもリリースしていないにもかかわらずバンドは突如として時の人に。
発売から50年以上経った現在でも、ミュージシャンを含めた世界中のファンから愛され続けています。
しかしバンドのデビュー直後は順風満帆なものではありませんでした。
「青い影」がシングルチャートで1位をキープしている最中、契約関係のトラブルからギターとドラム、そしてマネージャーまでもがクビに。
シングルとして発売された「青い影」と、これから発売する予定だったデビューアルバムのそれぞれで発売権を持つレーベルが異なってしまった結果、母国イギリスでのデビューアルバムに大ヒット中の「青い影」が収録されないという異常事態が発生。
また、最初に収録されたPVには曲との関係性がよくわからないベトナム戦争の様子が映し出されていたため、PVの撮り直しにも見舞われることに。
プロコル・ハルムのその後のイメージを決定づけてしまう名曲「青い影」を生み出したことで、それを超えるクオリティを期待するファンのプレッシャーを受けるようになってしまったことも、手放しで喜べる状況ではなかったかもしれませんね。
④文学的で難解な歌詞
歌詞がなにを伝えたいのか理解が難しく、世界中で色々な解釈によって翻訳されていると言われるこの曲。
たしかに哲学的というか文学的というか、訳してみてもすぐにはどんな内容なのかは把握しきれません。
「ファンダンゴ(ダンス)のステップを軽く踏んだ」
という冒頭のパートでは、酒に酔って部屋の端から端まで移動しながら彼女と楽しく踊っている光景が歌われていますが、サビでは一転して、
「幽霊のようだった彼女の顔が、青白く変わっていった」
という、どう考えても幸せとは思えない描写になっています。
おそらくは、それまでお互い愛し合っていると思い込んでいた男が彼女に別れを切り出された歌…のような感じなんでしょうか?
⑤粉屋は「カンタベリー物語」からの引用?
また、サビの歌詞に「粉屋」という部分があることから覚醒剤のことを歌った曲だという説もありましたが、それは作詞を担当したキース・リード自身が否定しています。
14世紀に書かれたイングランドの物語集「カンタベリー物語」に、粉屋の主人が若者に妻を寝取られる話があるのでそれが関係しているという説が優勢とも思ったけど、これもキース・リードは直接引用はしていないと言っているそうです。
じゃあ粉屋ってなんの比喩なんだろう?例えじゃなくて本当に粉屋ってことはないと思うんですけどね…。
とまあこんな風に、一筋縄では理解できず想像力をかき立てられる曖昧な歌詞だからこそ、何度も何度も歌の世界に没頭できてしまうのかもしれません。
↓Songwriter(s)【Gary Brooker / Keith Reid / Matthew Fisher】
We skipped the light fandangoturned cartwheels 'cross the floorI was feeling kinda seasick
俺は船に酔ったみたいな気分だった
but the crowd called out for moreThe room was humming harderas the ceiling flew away
天井が吹き飛ばされるほどだった
When we called out for another drinkthe waiter brought a tray
トレイを持ったウェイターがやってきた
★And so it was that lateras the miller told his talethat her face, at first just ghostly,turned a whiter shade of pale
だんだんと青白い色に変わっていったんだ
She said, 'There is no reasonand the truth is plain to see.'But I wandered through my playing cards
だけど俺は切るべき手札がわからなかった
and would not let her beone of sixteen vestal virginswho were leaving for the coast
16人のウェスタの乙女の一人には
and although my eyes were openthey might have just as well've been closed
見えてはいなかったかもしれない
(繰り返し ★)