①ストーン・ローゼズを脱退した後…

1996年にストーン・ローゼズを脱退し、その年のうちにジョン・スクワイアはThe Seahorses(ザ・シーホーセズ)を結成。

しかし結局、解散までにリリースされたのは1997年発売のアルバム「Do It Yourself」ただ一枚のみ。

個人的にはストーン・ローゼズは熱狂的になるほど好きではなかったけど、シーホーセズの1stシングル「Love Is the Law (ラヴ・イズ・ザ・ロー)」はかなりツボでした。

 

 

自由自在に駆け回るジョン・スクワイアのギターは、ブリットポップ期のバンドの中でも硬派めなサウンドが好みならハマると思う。

AメロはこれぞU.Kロックな感じ。サビに入った途端ちょっとサイケっぽくなる展開も、今あらためて聴くとかなり味がありますね。

どうしてもジョンのギターばかりが評価されがちだけど、歌詞の一語一語をリズミカルに詰め込んでいくようなクリスのボーカルもなかなかカッコよかった。

もっと評価されてもよかったんじゃないかと思うんだけどなあ。

 

 

歌詞はちょっと抽象的。直訳するとなんのことだかよくわからなくなる部分もあったので色々と調べながら和訳してみましたが…かなりセクシャルな歌だったんですね。

興味深いのが『オアシスはイケてる靴屋だった』という歌詞。

当時本当にオアシスという靴屋がブームだった可能性もゼロではないですが、これはこの頃「モーニング・グローリー」の大ヒットで世界中を席巻していたオアシスへの賛辞なんでしょうね。

YouTube【The Seahorses - Love Is The Law】

 

 

②歌詞と和訳

Songwriter - John Squire

We lived in a dogfish egg case
You could barely call it home
Sorry little lot no roof on top
But the fish left us alone
Try a little more said the girl next
Door it's time to roam
ドッグフィッシュの卵のケースみたいな
ほとんど家とは呼べない所に住んでた俺ら
屋根は無かったけど
魚たちを俺たちを放っておいてくれた
隣の女の子に言われたんだ
「もう少し頑張ってみようよ、旅に出る時間よ」ってね
Mad Lizzy Crumbs blind cobblers
Thumbs were a sight to behold
She was a rum old slapper and we always
Tried to get her pants off when she phoned
Left her cap by the sink it's not what you think
Oh take me home
ろくでなしのマッド・リジ―は靴職人の目を眩ませた
その親指は見ていて心を奪われるほどだった
彼女は風変わりな尻軽女で、俺たちはいつも
彼女が電話をかけてくるとパンツを脱がそうとした
流し台の横に彼女が帽子を置いて行ったのは
お前が思ってるような意味じゃない
ああ、俺を家に連れてってくれ
Now we know where we are going baby
We can lay back and enjoy the ride
Take in the sights and drown in our senses
Love is the law so take me deep inside
今どこに向かってるのかはわかってるさ
俺たちは旅に身をまかせて楽しめるんだ
風景を眺め、感覚に溺れよう
愛こそが法律 俺を深いところに連れて行ってくれ
Strap on Sally chased us down the alley
We feared for our behinds
Oasis was a shop with shoes so hot
They were sure to blow your mind
Running so fast I can taste the past
Oh take me home
ストラップ・オン・サリーが路地まで追いかけてきた
俺たちは尻を狙われることを恐れてた
オアシスはめちゃくちゃイケてる靴屋だった
お前もぶっ飛んじまうくらいにな
俺は過去を思い出すほどのスピードで走ってるのさ
ああ、家に連れて行ってくれよ
Now we know where we are going baby
We can lay back and enjoy the ride
Take in the sights and drown in our senses
Love is the law so take me deep inside
今どこに向かってるのかはわかってるさ
俺たちは旅に身をまかせて楽しめるんだ
風景を眺め、感覚に溺れよう
愛こそが法律 俺を深いところに連れて行ってくれ
These waters run deep it's clear my little one
Blue velvet star sky not a sound
The light in your eyes the smile on your ruby lips
Tells me my lost soul is found
水は深く、愛する人がハッキリと見える
青いベルベットの星空と静寂
お前の瞳に映る光、ルビーの唇と笑顔が
失った魂が見つかったことを俺に教えてくれる
Now we know where we're going baby
We can lay back and enjoy the ride
Take in the sights and drown in our senses
Love is the law so take me deep inside
今どこに向かってるのかはわかってるさ
俺たちは旅に身をまかせて楽しめるんだ
風景を眺め、感覚に溺れよう
愛こそが法律 俺を深いところに連れて行ってくれ

 

 

・dogfish = 小型の鮫(サメ)。

・Strap on = 「紐で縛る」、または性的なスラングとしてペニスバンドという意味も。

 

 

③プロデューサーはT.Rex、デヴィッド・ボウイの…

アルバムのプロデューサーは、T.Rex、デヴィッド・ボウイのほとんどの作品を手掛けたことで有名なトニー・ヴィスコンティ。

ジャケットには、ジョン・スクワイアが1996年に制作したパズルのピースで作られた地球型の彫刻「Do It Yourself」という作品が写っています。

 

アルバムは賛否両論の評価を受けたけれど英国の一般リスナーからは好評を博し、イギリスで30万枚以上を売り上げてUKアルバムチャートでゲイリー・バーロウのソロデビュー作『Open Road』に次ぐ2位を記録。

アルバムからは「Love Is the Law」(3位)、「Blinded by the Sun」(7位)、そしてオアシスのリアムと共作した「Love Me and Leave Me」(16位)のシングル3曲がUKチャート入り。

NMEの読者投票でザ・シーホーセズは1997年のベストニューアクトで4位に、Guitar magazineの読者投票で『Do It Yourself』が年間10位のアルバムに選ばれました。

 

 

④バンドメンバーは…

バンドメンバーは4人。

  • 名実ともにバンドの核だったギタリスト【ジョン・スクワイア】
  • パブで演奏している所をスカウトされたベーシスト【スチュアート・フレッチャー】
  • ヨークの路上でパフォーマンスをしていたボーカリストの【クリス・ヘルム】
  • オーディションにより加入したドラマー【アンディ・ワッツ】

 

後にジョンはバンドを解散した理由について『ここはクソみたいな場所だ。ここにいる価値はない』とまで語っています。

自分が元ストーン・ローゼズのギタリストとしてあまりにも有名だったためにシーホーセズは結成直後から多くの注目を浴びすぎてしまい、怠惰なバンドになってしまった…と。

 

 

しかしたった一枚のアルバムをリリースしただけでバンドが解散してしまった一番の理由は、ジョンとクリスの衝突です。

クリスは自分で曲を作ることもできるボーカリスト。

しかし、ジョンはシーホーセズ結成の前からクリスにそれほど良い印象は持っておらず、目を閉じて歌うクリスのパフォーマンスを見た時も、

『目を閉じて歌うのはフォークシンガーだけだ』

と、メンバーにすることを躊躇したそうな。

『好きな曲もある。でもクリスが書いた曲を心から良いと思ってるわけじゃない。彼がシーホーセズの曲としてレコーディングすることを望んだら問題になるかもしれない』

ジョンは後にクリスとの関係をそんな感じに語っています。

 

 

一方のクリスはというと、すでに完成している自分の曲が使用されず、ジョンが作っているまだ未完成の曲ばかりにバンドが取り組み、出来上がった楽曲に関連する多くの権利をジョンが獲得することに不満をつのらせていきます。

クリスは酒を飲み、二日酔いのアルコール臭い状態のままリハーサルに現れるようになり、ジョンのイライラはさらに増大。

クリスがシーホーセズと並行してソロ活動を進めようとしたことも、バンド内の亀裂を大きくしていきました。

そして1999年1月、2ndアルバムのためのセッション中にとうとう修復不可能な事件が起こってしまう。

フラストレーションが爆発したクリスはLarrivée(ラリビー)のギターをマッチ棒のように叩き壊し、ジョンはスタジオを出て二度と戻ってくることはなく、そのまま解散。

 

この2人が信頼関係を築けていたら2ndアルバムの発売もあったんだろうけど、鳴り物入りで華やかにデビューしながらもアルバム1枚で解散したことがかえって強烈なインパクトを残した感はある…のかな?