ウエストライフは2000年代前半、イギリス(UK)で爆発的な人気を誇ったアイルランド出身の5人組ボーカルグループです。
「Seasons In The Sun」はエバーグリーンな切ないメロディにじんわり心が温まる曲。
ノスタルジックな曲が好きな私にとって、死ぬまで聴き続けることが決定しているくらい思い入れの深い曲でもあります。
1999年のクリスマスウィークにUKでNo.1に輝いた「Seasons In The Sun」は、実はウエストライフのオリジナルソングではなく、カバー曲。
原曲はベルギー出身のシャンソン歌手、ジャック・ブレルが1961年に発表したフランス語の曲です。
1973年にそれを英詞でカバーして最初にヒットさせたのが、カナダのテリー・ジャックスという人。
ジャックスがカバーしたバージョンはアメリカで3週連続1位を獲得。この年の年間チャートでも2位になり、ウエストライフ以上の超特大ヒットを記録しました。
ウエストライフがカバーしたバージョンはジャックスのカバーに近いポップな雰囲気で、イントロなど所々にアイリッシュ風のアレンジも施されています。
↓Youtube【Westlife - Seasons In The Sun (Official Video)】
ジャック・ブレルの歌った原曲は「Le moribond(ル・モリボン)」という曲名で、直訳すると「瀕死の人」。
テリー・ジャックスやウエストライフのカバーバージョンとは違ってマーチングテンポで歌われるこの原曲は、失意のうちに死を迎える男の物語が歌詞になっています。
親友のエミール、神父の友人、知人のアントワーヌ、そしてアントワーヌと何度も浮気をした妻に最後の別れを告げる男。
男は、アントワーヌが妻の浮気相手であることを知り、お前のことは嫌いだったと言いながらも妻を大切にしてほしいと願う。
というような、かなりドロドロした内容なんですね。
君が妻の面倒を見てくれることは分かっているよ
僕を墓場に埋めるときは
これは原曲の一部を和訳したものですが、かなり暗い歌詞だと思いませんか?
なので、後にカバーしてヒットさせたジャックスはこの曲を評価しつつも『歌詞があまりに不気味』として歌詞を書き直しています。
書き直された歌詞のインスピレーションは、急性白血病を患って亡くなったジャックスの親友。
ジャックスがその友人に捧げた「Seasons In The Sun」はジャック・ブレルの原曲と同様に、死にゆく男が人生を共にした愛する人たちに最後の言葉を贈るという内容です。
しかしジャックスやウエストライフによるカバーバージョンでは、男は人生における自分の行動の善し悪しを認めながら安らかに息を引き取っているところが原曲と異なります。
失意のどん底で死んでいっただけの原曲とは違い、どちらかといえば心が温まるような救いのある終わり方かもしれません。
こちらはウエストライフがカバーした「Seasons In The Sun」の和訳です。
↓Songwriter(s)【Jacques Brel, Rod McKuen】
Goodbye to you, my trusted friendWe've known each other since we were nine or tenTogether we've climbed hills and treesLearned of love and ABC'sSkinned our hearts and skinned our knees
僕らはよく心と膝をすりむいたりしていたよね
Goodbye, my friend, it's hard to dieWhen all the birds are singing in the skyNow that spring is in the airPretty girls are everywhereThink of me and I'll be there
僕のことを思っていて 僕はそこにいるよ
We had joy, we had fun, we had seasons in the sunBut the hills that we climbed were just seasons out of time
だけど僕らが登ったのは季節外れの丘ばかりだった
Goodbye, Papa, please pray for meI was the black sheep of the familyYou tried to teach me right from wrongToo much wine and too much songWonder how I got along
どうやって暮らしていたんだろう
Goodbye, Papa, it's hard to dieWhen all the birds are singing in the skyNow that the spring is in the airLittle children everywhereWhen you see them I'll be there
あなたが子供たちを見ているとき、僕もそこにいるよ
We had joy, we had fun, we had seasons in the sunBut the wine and the song like the seasons have all goneWe had joy, we had fun, we had seasons in the sunBut the wine and the song like the seasons have all gone
ワインも歌も、季節が過ぎ去るようにすべて消えてしまったんだ
Goodbye, Michelle, my little oneYou gave me love and helped me find the sunAnd every time that I was downYou would always come aroundAnd get my feet back on the ground
僕の心を落ち着かせてくれたよね
Goodbye, Michelle, it's hard to dieWhen all the birds are singing in the skyNow that the spring is in the airWith the flowers everywhereI wish that we could both be there
一緒にその場所にいられたらよかったのに
We had joy, we had fun, we had seasons in the sunBut the hills that we climbed were just seasons out of timeWe had joy, we had fun, we had seasons in the sunBut the wine and the song like the seasons have all goneWe had joy, we had fun, we had seasons in the sunBut the hills that we climbed were just seasons out of timeWe had joy, we had fun, we had seasons in the sunBut the wine and the song like the seasons have all gone
だけどワインも歌も、季節が過ぎ去るようにすべて消えてしまったんだ
ウエストライフは、1999年~2007年までの期間に14曲のシングルがUKで1位を獲得。
これによりUKで『シングルが1位になった曲数が多いミュージシャン』で3位になっています。
ちなみにウエストライフと同数で3位にクリフ・リチャード、2位はビートルズ、そして1位はエルヴィス・プレスリーです。
この結果だけ見ると、ウエストライフは世界中で大ヒットを飛ばしまくっていたように感じるかもしれませんが、実はアメリカではそれほど成功をおさめていません。
アメリカで最もヒットし、認知されている「Flying Without Wings」でもUSチャートで10位がピーク。
ウエストライフがデビューした翌年、1999年と言えばバックストリートボーイズの「I Want It That Way」が発売されて世界中で大ブームになっていた頃ですからね。
バックストリートボーイズの影に埋もれてしまったんでしょうか…。