①ニッキー・ホプキンスは…

ニッキー・ホプキンスは1960年代~1970年代にかけてザ・フー、キンクス、ジェフ・ベック、ローリングストーンズなどのレコーディングに参加するなど、大物ミュージシャンから引っ張りダコだったピアニストです。

 

ジェフ・ベック・グループの「ガール・フロム・ミル・ヴァレ―」、ローリングストーンズの「シー・イズ・ア・レインボー」でも大活躍だったので、名前をご存じの方も多いかもしれません。

 

1973年リリースの「The Tin Man Was A Dreamer (夢見る人)」は、そんな凄腕セッションピアニストの歌声を聴くことのできる貴重なアルバム。

 

CBSコロンビアが多額の契約金を支払い、著名なミュージシャンが参加し、卓越したピアノプレイだけではなくソングライティングの才能を見せつけてくれたアルバム…でしたが、「夢見る人」が高い評価を受けることはありませんでした。

 

その理由としては、アルバムプロモーションのためのライブやツアーを行わなかったこと、多くの大物ミュージシャンに認められたピアニストとしての腕に比べ、ボーカリストとしての実力が伴っていなかったことなどが挙げられています。

 

そんなこんなで過小評価されてしまった感があるものの、間違いなくこのアルバムはニッキー・ホプキンスの才能が凝縮された、音楽史に残るマスターピース。

 

中でも特に印象的なのが、哀しげで美しいピアノフレーズと繊細なニッキー・ホプキンスのボーカルが完璧に調和したバラード「Lawyer's Lament(弁護士の嘆き)」という曲です。

 

YouTube【Lawyer's Lament】

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ソニーミュージックエンタテインメント

 

 

②歌詞の和訳

Songwriter(s) - Nicky Hopkins, Jerry Williams

When you find you can't go on
Wearying down what you have
Call on me and if I'm free
I'll try and add up the amount
キミが持っているものを使い果たして
どうにもならない時は電話して欲しい
僕の手が空いていれば
借金を減らせるように頑張るよ
Don't you think I won't be fair
I can see you're on the bridge of despair
I'm gonna help you all I can,
You can feel more things than the average man
I'll try to itemize all your bills
Try to cure all you ills
But please don't ask too much of me
不公平にするつもりがないのはわかるよね
絶望の橋の上にいるキミが見えるんだ
僕はできる限りの力で助けるつもりだよ
キミは普通の人よりも多くのことを感じてしまうから
請求書をすべて明細にして
キミの問題を解決してあげるけど
どうかそれ以上は求めないでくれないか
Yesterday you called said, Will you see me through
I said, Sure my friend, I'd love to help
Cause I'm watching after you
Whatever it is you may need, be it large or be it small
There's nothing I won't do if you'll only call me
昨日電話で「助けてほしい」と言ってきたキミに
「友よ、もちろんさ」僕はそう答えた
なぜなら僕はキミをずっと見守っていたから
必要なことが何であっても、大きなことでも小さなことでも
僕に電話さえしてくれればできないことは何もないんだ
Come and tell me about your plans all about your dreams
I'll try more than I shall float those rivers into streams
And if I go too fast for you, stop me for awhile
Cause all I want now in return is just to see you smile
キミの計画や夢を教えて欲しい
川のように大きな問題だって小川に変えてみせる
それでも流れが速いのなら少しの間僕を止めてくれ
僕が求めるのはキミの笑顔だけなんだから
Now it seems so long ago
That you were lost, just a part of the show
But then again we may never know
That is as the old winds fly past our eyes
We feel the new winds blow
今ではとても昔のように感じるよ
キミが人生に迷い、ショーの一部になっていたことを
とは言っても僕たちは決して知ることはないのさ
古い風は目の前を通り過ぎ
僕たちは新しい風を感じるんだ
Please believe me when I tell you that
These are brand new days
All our plans are working well
If you'll say you'd give me a break
And if you don't believe that all of this is free, well
Come and take a look in the books
And you'll see I have the fee
どうか信じて欲しい
新しい時代が幕を開け
僕たちの計画はすべて順調に進んでいる
もしキミがもう助けはいらないと言うのなら、
僕がしていることが無償だと信じないのであれば、
ここへ来て帳簿を見てくれればいい
僕が費用を負担しようとしていることがわかるから

 

 


友人の悩みを解決するために、できる限りの手を尽くしてあげたいと思っている自分を弁護士に見立てた歌詞。

 

どこかアメリカ南部のブルース的なものを取り入れた曲が多いように感じるこのアルバムの中で、ひたすら叙情的で美しい「弁護士の嘆き」は好みが別れるところかもしれません。

 

だけど、この胸が押しつぶされそうなほどに切ないピアノの旋律とオーケストレーションが大好物な人はきっと多いはず。

 

 

前述の通りニッキー・ホプキンスはセッションピアニストなので、レオン・ラッセル、ビリー・ジョエル、エルトン・ジョンのような『ボーカルの巧さ』を求める人には合わないと思う。

 

もともと私は『儚い』『繊細』なボーカルが嫌いじゃない…というかむしろ好きだったので、すんなり入り込めました。

 

 

③ピアノの曲にハマった私が…

まだ東京に住んでいた当時、ピアノの曲にハマった私が聴いていたのはレオン・ラッセル、ビリー・ジョエル、エルトン・ジョン、ギルバート・オサリバン、ベン・フォールズなどなど、ピアノ系シンガーソングライターの曲ばかり。

 

ちょうどその頃は本格的に1970年代、1980年代の洋楽に興味を持ち始めた時期でもあり、電車でそれほど遠くない距離に大きなCDショップがたくさんあったので頻繁に洋楽CDを漁りに行ってました。

 

とは言っても特定のアーティストのCDを目指してショップに行くわけではなくて、まずは陳列されているCDを全てバーッとひと通りチェック。

 

慣れてくると、A~Zの欄まで全部チェックするのに1時間かからなかったと思います(笑)

 

国内盤の洋楽CDには帯が付いているので、その帯コメントを見て『これだ!』と思ったCDを購入。

 

曲やアーティストのことを全く知らないのにジャケット写真のインパクトだけで買ってしまう『ジャケ買い』ほどではないけど、貧乏学生の買い方としてはかなりギャンブル性は高かったかも…。

 

 

 

かなり昔にリリースされた洋楽アルバムだとリマスターされた廉価版が国内盤として再リリースされていることもあり、もちろん歌詞とか訳もついているのでコストパフォーマンスが良いんですよね。

 

特に当時、ソニーレコードで出していた廉価版シリーズ『SUPER NICE PRICE 1600 (スーパーナイスプライス)』はニッキー・ホプキンスのこのアルバムを筆頭に素晴らしいアルバムばかり。

 

nickyhopkins3-min

 

1600円で日本語訳だけでなく詳細なライナーノーツまで付属されてるんですからもう最高。

 

それに最初のリリースから20年以上たってから再販するなんて、自分が無知なだけでいまだにファンが多い名盤に決まってますからハズレを引く心配も無いと思ってましたからね。

 

 

④ストーンズの「She Is A Rainbow」で…

何を隠そう、世界的なレジェンドバンドであるローリング・ストーンズの名曲「She Is A Rainbow(シー・イズ・ア・レインボー)」でピアノを弾いているのはニッキー・ホプキンス。

 

ちなみに、美しくもサイケなメロディを彩るピアノの存在感が抜群な「She Is A Rainbow」は、ローリング・ストーンズが1967年にリリースしたアルバム『サタニック・マジェスティーズ』に収録されている曲です。

 

この曲、日本では1990年代にiMacのCMに起用されていました。

一回聴いたら絶対忘れられないくらい印象的なピアノなので、一度でもCMを見たことがあれば『あぁ、あの時の!』と心の中で叫んでしまうはず。

YouTube【The Rolling Stones - She's A Rainbow (Official Lyric Video)】