①声にはまだ少年っぽさが残って…
「With You All the Time」は、ギャレス・ゲイツのデビューアルバム『What My Heart Wants to Say』に収録されているバラード。
声にはまだ少年っぽさが残ってるんだけど、そこに真っすぐで純粋な想いが乗ってて…聴くと胸にすっと入ってくる。
バラードにもいろんな形があって、悲しいバラードもあれば情熱的なバラードもあるけれど、この曲はとにかく“優しいバラード”。そっと寄り添ってくれるような、そんな温かさを感じる。
ギャレスが注目されたのは、2001〜2002年の「ポップアイドル」シリーズ1。17歳で準優勝したとき、その優しい歌声にたくさんの人が惹かれていった。「With You All the Time」を聴けば、当時イギリス中が熱狂してた理由もなんとなくわかる気がする。
その勢いのまま出したアルバム『What My Heart Wants to Say』は、シングルが3曲も全英1位になって、アルバム自体も2位。
タイトルを直訳すると「僕の心が言いたいこと」。吃音で思うように言葉が出なかった彼だからこそ、このタイトルには重みがあるんだろうなぁ。なんとなくのアルバムタイトルじゃなくて、彼の気持ちがそのまま表れてるように思えるんだよね。
Youtube【With You All The Time】
②歌詞と和訳
Songwriter - Jörgen Elofsson
I live beneath the heartI watch you from the darkI'm every breath I'm every dream
I've known you foreverI've followed you everywhereI'm every scar I'm who you are
When you think you're aloneWhen you cry 'cause the world's unfairYou can rest assured I'm always there
Even when you feel like you don't belongEven when you fall and it all goes wrongYou know that I'm with youThat I'm with you all the time
Say a little prayer for the restless heartWe shall never ever drift apartKnow that I'm with youKnow that I'm with youWith you all the time
I walk your every roadI'm laughing when you smileAnd when you cry I cry too
I made you a promiseThat I shall forever beYou're on your own but not alone
When you're down when you're outwhen the world tells you no-one caresYou can rest assured I'm always there
When you think you're aloneWhen you cry 'cause the world's unfairYou can rest assured I'm always there
Even when you feel like you don't belongEven when you fall and it all goes wrongYou know that I'm with youThat I'm with you all the time
Say a little prayer for the restless heartWe shall never ever drift apartKnow that I'm with youKnow that I'm with youWith you all the time
Save a little love for meYou'll seeSave a little love for meYou'll seeSave a little love for meYou'll seeAnd you'll see
Even when you feel like you don't belongEven when you fall and it all goes wrongYou know that I'm with youThat I'm with you all the time
Say a little prayer for the restless heartWe shall never ever drift apartKnow that I'm with youWith you all the timeYou know that I'm with youThat I'm with you all the time
③小さい頃からずっと吃音に悩んで…
ギャレスが音楽に夢中になったのは9歳のころ。地元ブラッドフォードの大聖堂合唱団に入って、ぐんぐん力をつけて聖歌隊長にまでなった。1997年には、なんとエリザベス2世の前でソロを歌っている。もうこの頃から特別な存在だったんだと思う。
でも実は、小さいころからずっと 吃音(どもり) に悩んでいたそう。地方オーディションの自己紹介では「僕の名前は…」と口にしたまま、20秒ほど声が出なくなってしまったりも(動画0:25〜)。
Youtube【Gareth Gates first audition】
「歌うこと自体は不安じゃなかったけど、審査員と話すことはめちゃくちゃ緊張した」――ギャレスはあとになってそう語っているんですよね。けれど、一度歌い出すとまるで別人みたいに堂々としていて…そのギャップに心を奪われる人がどんどん増えていって。
努力を重ねた彼は、今では吃音をコントロールできるようになり、同じ悩みを持つ人たちにスピーチを教える立場にまでなっているらしい。中には、彼の授業を受けたいあまり「自分は吃音だ」と偽って応募するファンまでいたというからすごい話だなって思う。
④あのとき、優勝は逃したけど…
あのとき、優勝は逃した。けど、ギャレスの歩みは止まらなかった。
デビューシングル「Unchained Melody」が4週連続で全英1位になったって聞いたとき、私は「ああ、やっぱり」と思った。最年少でギネスに載ったっていう記録も、驚くより先に「そうだよね」って頷いてしまった。あのパフォーマンスなら当然だなって。
そのあとに出した「Anyone of Us (Stupid Mistake)」も「Suspicious Minds」も、やっぱり1位になった。2位に終わったっていう結果なんて、もう意味がないのかもしれない。むしろ「準優勝」という肩書きが、逆に彼の快進撃を強調してるようにも見える。
でも、決勝戦の結果はウィル・ヤング460万票、ギャレス410万票。ほんのわずかの差だった。回線が混んで投票できなかった人も多かったらしい。もしかしたら「本当は勝ってたんじゃないか」なんて思ったりもしないではいられないんだよね。
でも、870万票という世界記録の数字が示してるのは、それ以上に大きなものだと思う。国全体がひとりの青年の歌声に夢中になってた。その事実だけで十分なんだろうな。
そして歌声だけじゃなくて、なんとギャレスはクラシックギターとピアノでも最難関のグレード8を持っているそう。ピアノのグレード8は音大の入試レベルらしい…。プロでも難しいその試験をクリアしていたなんて…。“ポップアイドル出身”なんて肩書きじゃ、とても語りきれない人なんだと思う。
⑤「Pop Idol」はギャレスを生んだだけじゃ…
「ポップアイドル」は、ギャレス・ゲイツを生んだだけじゃなかったんだなあ、と今になって思う。シリーズ2で終わったと思ったら、「Xファクター」として戻ってきて。ルールも変わって、ソロだけじゃなくグループも挑戦できるようになった。その流れからワン・ダイレクションが出てきたのは有名な話。でも彼らが優勝じゃなくて3位だったなんて、ちょっと意外だよね。
「Xファクター」は単に勝ち負けを決める番組じゃなくて、審査員がアーティストを育てる仕組みまで持ち込んでいた。だからなのか、ただのショーというより“成長の物語”を見ているような感じがあったんだと思う。
アメリカでは「アメリカンアイドル」が一気に社会現象になっていた。ケリー・クラークソン、キャリー・アンダーウッド、アダム・ランバート…。名前を挙げるだけで、その規模の大きさがわかる気がする。今振り返れば、ポップもカントリーもロックもR&Bも、ジャンルを超えて次々とスターが生まれていたんだなあ。