①1989年にアメリカで結成されたジェリーフィッシュ
- 発売年:1993年
- アルバム名:Spilt Milk(こぼれたミルクに泣かないで)
- アルバム最高位:全米164位、全英21位
ジェリーフィッシュは、アンディ・スターマー (Vocal/Drum) とロジャー・マニング (Piano/Keyboard/Guitar) によりアメリカのサンフランシスコで結成された4人組ポップロックバンド。
1993年リリースの2ndアルバム『Spilt Milk(こぼれたミルクに泣かないで)』は今でこそデコレーションポップの金字塔としてめちゃくちゃ評価されているアルバムですが、ランキング最高位はUKで21位。
ジェリーフィッシュの出身国であるアメリカに至っては164位と商業的にはまったく成功することなく、こんなにハイクオリティな2ndアルバムが実質上のラストアルバムになってしまいました。
控えめに言っても名曲ポップソングばかりの『こぼれたミルクに泣かないで』ですが、強いて1番好きな曲を挙げるとしたら8曲目の「All Is Forgiven (優しく許して)」です。
この曲は偉大なシューゲイザーバンド、マイ・ブラッディ・バレンタイン的なノイズサウンドをジェリーフィッシュ風デコレーションポップに取り入れた異色作。
マイブラが好きな人も、そうじゃない人にもぜひ一度は聴いてほしいノイズポップの傑作です!
↓Youtube【All Is Forgiven】
↓【All Is Forgiven】Songwriter(s) - Andy Sturmer, Roger Manning
Heal me darlingPleaded the playboy bedroom eyesGrace your sunshineTill everything's ok, alright, fine
全てが上手くいくまで
What's hers is hisCause everything is forgiven,ForgivenThough he soured the milk of human kindnessAll is forgiven (all is forgiven)
全ては許されるのだから(全ては許される)
Truth and avariceEncircle his words like a barberpoleTwisted and uselessTill they disappear in her camisole(goodnight alibi)
(おやすみのアリバイ)
Throw way your daggers and pillsCause everything's still forgiven,ForgivenThough he bit off the nipple of human kindnessAll is forgiven
全ては許されるのだから
Hypocrite, four flusher, snake in the grassJust a swindler and wolf in sheep's clothing,Liar
ただの詐欺師、羊の皮を被った狼、嘘つき
Yes he tries to hide the cross he bearsBut splinters, like the truth have always risenAll is forgiven
全ては許される
Though he shelters himself in theShade of the wings of a stool pigeon,All is forgiven
全ては許されるのだから
②アルバム全曲紹介
1. おやすみ / Hash
子守歌調のゆったりした短い曲ですが多重録音を使っている実験的な曲。
2. ファンクラブに入るなら / Joining a Fan Club
そう言えば、ヴァン・ヘイレンのエディも演奏中にギターとキーボードをチェンジしてたような気がします。
3. セブリナとペーストとプラトンと / Sebrina, Paste, and Plato
普通の人にはなかなかない発想ですね…。
4. ニュー・ミステイク / New Mistake
歌詞の量も多めでリズミカルに畳みかけてくる感じなので、何度聴いてもマンネリすることなくリピートし続けられるタイプの曲だと思います。
5. 憐れみの王様 / Glutton of Sympathy
「ニュー・ミステイク」の賑やかな雰囲気が終わった瞬間、イントロなしで始まる冒頭のボーカルにはハッと息を飲んでしまいます。
6. スーパースターに救いの手を / The Ghost at Number One
シングルに選ばれるのが当然だと思えるくらいノリがよくて聴きやすい曲で、やはりこの曲でも軽やかで楽しいコーラスが満載です。
7. バイ・バイ・バイ / Bye Bye Bye
アコーディオンとか、民族楽器のバラライカとか、この曲だけで使われている楽器が独特な雰囲気を作っているんでしょうね。
8. 優しく許して / All Is Forgiven
途中で瞬間的に取り入れられているクイーン風のコーラス(特に最初のサビの直後!)はライブで合わせるのは激ムズなんじゃないでしょうか?
9. ラッシャン・ヒル / Russian Hill
しっとりと落ち着いた曲でジェリーフィッシュのフックの効いたポップさはあんまり感じられないかもしれませんが、アルバムの他の曲を聴きまくった後に改めて聴くと良さがわかると思います。
10. 彼は僕のともだち / He's My Best Friend
小さなころからの友達との友情がストーリーになっています。
11. 言葉にさよならを / Too Much, Too Little, Too Late
アンディは瞬間的に自然なファルセットを入れるのがホントに上手いと思います。
12. あしたがあるから / Brighter Day
他の曲がポップ過ぎるのであまり目立たないかもしれませんが決してクオリティは低くないし、ここでのコーラスワークも見事です。
③完成度の高いコーラスワーク
ジェリーフィッシュは全員がメインボーカリストとして歌えるくらいの歌唱力を持っている、クイーンのようなバンドです。
とことんカラフルで、ポップのバルブを全開にしたかのように溢れ出てくるメロディアスでキャッチーな曲も彼らの魅力ですが、それぞれの歌唱力を活かしたコーラスワークも最高。
クイーンみたいにオペラ的で重厚な感じじゃなくて、ジェリーフィッシュはカラフルで楽しい雰囲気のコーラスワークという違いはあるかもしれないけど、『こぼれたミルクに泣かないで』でも随所にクイーンを意識した部分があるのがすぐにわかると思います。
『こぼれたミルクに泣かないで』は1stアルバムに比べ、かなり賑やかなサウンドが特徴。
そこで1stアルバムが好きか2ndアルバムが好きか分かれるところだと思いますけど、どちらかと言えば私はこのゴテゴテしてきらびやかな音の2ndが好み。
でも1stアルバムも「The Man I Used To Be」「She Still Loves Him」みたいに、2ndよりシンプルだけどポップセンスは爆発してる曲が目白押しなので、結局は2枚のアルバムを交互に聴く感じだったかもしれません。
④立ったまま演奏する個性的なドラムプレイ
ボーカルでドラムのアンディ・スターマー。
その演奏をライブ動画で見るとわかりますが、立ったままドラムを叩いて歌うっていうちょっと珍しい演奏スタイル。
動画によっては座って叩いているのもありますけどね。
今まで私が見てきたボーカル兼ドラマーは、カーペンターズのカレン・カーペンターだったり、イーグルスのドン・ヘンリーだったり、ビートルズのリンゴ・スターだったり、ジェネシスのフィル・コリンズだったり。
みんなちゃんと座ってドラムを叩いてました(笑)
今現在、私は立ったままドラムを叩くボーカリストはアンディ以外見たことがないです。
今後ジェリーフィッシュのフォロワーバンドが出てきてマネしてくれないかな、ってちょっと期待してる部分もあるかも…。
⑤たった2枚のスタジオアルバムで解散
このアルバムからは「New Mistake(ニュー・ミステイク)」「The Ghost at Number One(スーパースターに救いの手を)」の2曲がシングルになっています。
- New Mistake(ニュー・ミステイク) ・・・全英55位
- The Ghost at Number One(スーパースターに救いの手を)・・・全英43位
という感じで、全英でちょっと売れたけど本国のアメリカではほとんど受け入れられず。
「The Ghost at Number One」はアメリカビルボードのモダンロック部門ではトップ10に入ってるんですけどね…。
『こぼれたミルクに泣かないで』の制作では、それまでメンバーだったギタリストとベーシストの2人が脱退しています。
ベーシストだけは見つかったけど、正式なギタリストに関しては不在のままレコーディング。
なのでギターはスタジオミュージシャンが演奏していますが、『こぼれたミルクに泣かないで』の完成後にエリック・ドーヴァーがギタリストとして正式に加入。
そしてこのエリック・ドーヴァーは、ジェリーフィッシュ解散後にキーボードのロジャー・マニングの2人でImperial Drug(インペリアルドラッグ)というバンドを結成。
『こぼれたミルクに泣かないで』のテイストをもう少しハードにした感じだけど、ジェリーフィッシュが好きな人にならかなりおすすめできるんじゃないかなと思います。
↓Youtube【Imperial Drag, "'Breakfast' by Tiger (Kiss It All Goodbye)"】
⑥YUKIの「プリズム」はアンディ・スターマーが作曲
実は、1996年に日本のオリコンチャートで12週連続1位を記録した「アジアの純真」で有名なパフィーの名付け親は、ジェリーフィッシュのアンディ・スターマー。
日本との関係で言えば、アンディは他にも元JUDY AND MARYのYUKIのソロ「プリズム」の作曲編曲を手掛けたりもしています。
私はこの「プリズム」が発売された当時、そのメロディの美しさにひと耳惚れしてCDを購入してました。
「プリズム」にハマった何年か後にジェリーフィッシュのアンディが関わっていたことを知り、なぜ「プリズム」に一瞬で魅力を感じたのか妙に納得したような気がします。
↓Youtube【 YUKI『プリズム』】