①死をテーマにしたロックオペラ

イングランドのバンド、The Who(ザ・フー)が1969年のアルバム「トミー(Tommy)」で初めて本格的なジャンルとして確立させたロックオペラ。

My Chemical Romance(マイ・ケミカル・ロマンス)の3rdアルバム「ザ・ブラック・パレード(The Black Parade)」も若くしてガンになってしまった男性の死生観がテーマのロックオペラで、2006年にリリースされ全英・全米ともに最高位2位の大ヒットを記録しました。

 

 

このアルバムで私のイチ押しは6曲目。泣きのメロディと力強く悲しげなギターに感情を切なく揺さぶられるバラード「アイ・ドント・ラヴ・ユー(I Don't Love You)」です。

この曲を初めて耳にした時のインパクトは、今まで聴いてきたポップ・ロック系のバラードの中でもまさに別格。

ジェラルドのシャウト気味で感傷的に声を張り上げるボーカルは圧巻ともいうべき表現力で、まるで泣いているかのように歌うジェラルドの表情に引き込まれる公式ミュージックビデオも素晴らしい。

現実とは遠い別の世界の景色のようなモノクロの映像、そしてジェラルドの美しい表情をアップで見ながら「アイ・ドント・ラヴ・ユー」を聴いていると、悲しい曲のはずなのにどこかうっとりとさえしてしまう。

なので会場の臨場感がダイナミックに伝わってくるライブ映像もいいけど、私はどちらかと言えばミュージックビデオを見ながら聴くことが多いです!

 

↓Youtube【My Chemical Romance - I Don't Love You [Official Music Video] [HD]】

 

 

②歌詞と和訳

癌になって治る見込みのないことを知っている主人公はなかなか彼女への未練を断ち切ることはできない。

だからせめて立ち去る時には振り向いて言ってほしいと願う、恋愛の歌詞としても成立するような内容です。

死をテーマにしたアルバムの中の1曲として、死にゆく主人公の気持ちを想像しながら聴くと恋愛の別れ以上に悲しいものを感じます…。

 

「I Don't Love You」 Songwriter(s) - My Chemical Romance

Well, when you go
Don’t ever think I’ll make you try to stay
And maybe when you get back
I’ll be off to find another way
And after all this time that you still owe
You’re still a good-for-nothing I don’t know
So take your gloves and get out
Better get out while you can
When you go, and would you even turn to say
“I don’t love you like I did yesterday" ?
Sometimes, I cry so hard from pleading
So sick and tired of all the needless beating
But baby, when they knock you down and out
Is where you ought to stay
And after all the blood that you still owe
Another dollar’s just another blow
So fix your eyes and get up
Better get up while you can
Whoa, whoa, whoa
When you go, and would you even turn to say
“I don’t love you like I did yesterday" ?
Well, come on, come on
When you go, would you have the guts to say
“I don’t love you like I loved you yesterday" ?
I don’t love you like I loved you yesterday
I don’t love you like I loved you yesterday
キミが行ってしまうなら
俺が引き留めようとするなんて思わないでほしい
たぶんキミが戻って来たときには
俺は別の道を見つけに行っているだろう
結局のところキミにはまだ貸しがあるのさ
キミが出来損ないのままなのか俺にはわからない
だから手袋を脱いで出て行ってくれ
今のうちに出ていった方がいいんだよ
キミが行ってしまうのならどうか振り返って言ってくれないか?
「あなたを愛してはいない それができた昨日までのようには」と
時々、俺は訴えかけるように大泣きしてしまう
無駄に傷つけあうことにはもううんざりだ
だけどベイビー、奴らに打ちのめされた時こそ
キミはその場所にとどまるべきなんだ
結局キミに流れているのは俺に借りた血なんだから
金を手に入れてもまた別の一撃をくらうだけなのさ
だから視線を定めて立ち上がるんだ
それができる今のうちに
キミが行ってしまうのならどうか振り返って言ってくれないか?
「あなたを愛してはいない、それができた昨日までのようには」と
言ってくれ、言ってくれよ
キミが行ってしまう時はどうか勇気を出して言ってくれないか?
「私はもう愛してはいない あなたを愛していた昨日までのようには」と
俺も愛してない キミを愛していた昨日までのようには
俺も愛してない キミを愛していた昨日までのようには

 

 

③クイーン、ピンク・フロイド、そしてビートルズ

マイ・ケミカル・ロマンスがザ・ブラック・パレードを制作するうえで強くインスパイアされたアルバムとして挙げているのが、クイーンの「オペラ座の夜」、そしてピンクフロイドの「ザ・ウォール」です。

言わずもがなですが「オペラ座の夜」はフレディの圧倒的なオペラヴォイスが堪能できる「ボヘミアン・ラプソディ」が収録されたアルバム。もう一方の「ザ・ウォール」は1979年に大ヒットしたロックオペラの名作と呼ばれるアルバム。

なので影響を受けたアルバムとしてこの2枚が挙げられたのにはそれほど違和感はないのかも。

 

 

そしてもう1枚大きなインスピレーションを受けたアルバムがあるそうで、それはあのビートルズが8枚目のアルバムとしてリリースした「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band)」

ビートルズのこのアルバムは架空のバンドのショーをコンセプトにしたもので、世界初のコンセプトアルバムと言われているアルバムです。

「サージェント~」はロックオペラではないものの、架空のバンドのショーという世界観はザ・ブラック・パレードも通ずるものがあったんでしょうね。

 

 

⑤「ザ・ブラック・パレード」の収録曲は粒ぞろい

2ndアルバムの「スウィート・リベンジ(Sweet Revenge)」からすでに人気は出始めていたマイ・ケミカル・ロマンスは3rdアルバムの「ザ・ブラック・パレード」で一気にブレイク。

そしてファンが期待に胸をパンパンに膨らませた4thアルバム「デンジャー・デイズ(Danger Days)」がリリースされたわけですが、収録曲は爽やかでポップな曲が多く、マイケミのこの変化にガッカリして離れてしまったファンも多かったかもしれません…。

 

 

ちなみに5曲目に収められている「ウェルカム・トゥ・ザ・ブラック・パレード(Welcome To The Black Parade)」も素晴らしく、これぞファーストシングルとも言うべきクオリティに仕上がっています。

疾走感があるハードでキャッチーなメロディ。クイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」を意識したような、小さな曲を組み合わせた組曲のような構成は何度聴いても飽きないし、個人的にはポップロックの金字塔と言ってもいいくらいのデキですね。

 

 

ところで「The Black Parade」はアルバムのタイトルで、このアルバムからの1stシングルの曲名が「Welcome To The Black Parade」です。混同しないように気を付けましょう…。

 

↓Youtube【My Chemical Romance - Welcome To The Black Parade [Official Music Video] [HD]】

 

エモのジャンルに分類されることも多いマイ・ケミカル・ロマンス。

でもジェラルドはエモのことを『fucking garbage (ゴミクズ)」』と言ったり『a pile of shit(そびえ立つクソ)』と言ったりしてるくらいエモに分類されることを極端に嫌っているそうです。

オアシスのギャラガー兄弟にも引けを取らないくらいの言いっぷりですね…。