①ブライアン・メイが作詞作曲と…
ブライアン・メイが作詞作曲とリードボーカルを務める「Sail Away Sweet Sister」は、心に深く染み渡るポップバラード。ブライアンの内省的な歌声はもちろんのこと、中間部の高音パートでフレディ・マーキュリーが加える印象的なハーモニーも聴きどころです。
この曲は、ハードロックに加え、ファンク、ディスコ、ロカビリーといった多様な要素を取り入れ、クイーンの創造性が頂点に達した「第二黄金期」のアルバム『ザ・ゲーム』に収録されています。
1980年に発売された『ザ・ゲーム』は、アメリカ市場で400万枚を超えるセールスを記録し、クイーンのアメリカにおける最売上作品となりました。「愛という名の欲望」と「地獄へ道づれ」という2曲の全米No.1シングルを擁するこのアルバムの中で、「Sail Away Sweet Sister」はシングルカットされなかったため、過小評価されがちかもしれません。しかし、個人的には非常に好きな楽曲で、ベストアルバムへの収録が見送られるたびに、心の中で小さくため息をついてしまうほどです…。
Queen - Sail Away Sweet Sister (To The Sister I Never Had) (Official Lyric Video)
②歌詞と和訳
Songwriter(s) - Brian May
Hey little babe you're changingBabe are you feeling sore?It ain't no use in pretendingYou don't wanna play no more
It's plain that you ain't no babyWhat would your mother sayYou're all dressed up like a ladyHow come you behave this way
Sail away sweet sisterSail across the seaMaybe you find somebodyTo love you half as much as meMy heart is always with youNo matter what you doSail away sweet sisterI'll always be in love with you
Forgive me for what I told youMy heart makes a fool of meOoh, you know I'll never hold youI know that you gotta be free (yeah)
Sail away sweet sisterSail across the seaMaybe you find somebodyTo love you half as much as meTake it the way you want itBut when they let you down my friendSail away sweet sisterBack to my arms again
Hot child don't you know, you're young -You've got your whole life ahead of youAnd you can throw it away too soonWay too soon (yeah)
Sail away sweet sisterSail across the seaMaybe you find somebodyGonna love you half as much as meMy heart is always with youNo matter what you doSail away sweet sisterI'll always be in love with you
「Sail Away Sweet Sister」の歌詞は妹に対する兄の愛情がテーマで、ブライアン・メイが『もし自分に妹がいたら』という想像のをもとに書いたそうです。
そこには、成長していく妹への複雑な感情、愛情とほんの少しの寂しさが入り混じり、兄の優しい眼差しが感じ取れます。
Aメロでは妹の旅立ちを名残惜しむかのように少し悲しげに歌い上げ、しかしサビに入ると一転、愛する妹の未来を願い、その背中を力強く押してあげるような温かい歌声が響き渡るのです。
とりわけ、妹の幸せを願う気持ちがありながらもどこか引き止めたいような、そんな相反する感情が強く滲み出ている「Sail away sweet sister / Sail across the sea / Maybe you'll find somebody / To love you half as much as me」というサビの一節が切なくて切なくて…。
③非常に繊細で、聴けば聴くほど…
「Sail Away Sweet Sister」は、Aメロとサビの繰り返しというオーソドックスな構成。
派手な曲ではないけれど非常に繊細で、聴けば聴くほどその美しさが際立ってきます。シンプルな構成ながらも、それぞれのパートで感情の起伏が丁寧に描かれており、その歌詞と相まって聴き終わった後に深い余韻を残す、魅力的な曲です。
クイーンの楽曲の中でも、このようなアコースティックでパーソナルな感情を描いた曲は、彼らの音楽性の幅広さを改めて感じさせてくれますね。
美しいメロディと、シンプルなアレンジの中に込められた深い感情は、まさにブライアン・メイならではの感性を表していると言ってもいいような気がします。
そういえば昔、ガンズ・アンド・ローゼズのアクセル・ローズがこの曲をライブで歌っているYouTube動画を見かけたことがあるんです。ただ、その動画がサビの前で終わっちゃっていて、ちょっと、いや…かなり残念だったなあ。
④フレディ・マーキュリーの歌声は…
フレディ・マーキュリーの歌声は、圧倒的な声量、突き抜けるような高音、そしてドラマティックな表現力が際立っており、聴く者の心を瞬く間に捉えるような力強さが特徴です。クイーンの数々のヒット曲は、彼のこの唯一無二の歌声によって一層その輝きを増していると言えるんじゃないでしょうか?
フレディの圧倒的な歌唱力はクイーンの絶対的な魅力の一つ。だけどブライアン・メイが歌うバラードには、また違った魅力が確かにあります。
フレディの歌声が、クイーンの楽曲に華やかさとカリスマ性を与えているのに対し、ブライアンの歌声や楽曲には、より個人的な感情に深く触れ、聴く者の心にそっと寄り添うような温かさがあるんですよね。とまあ、二人の個性が共存することでクイーンの音楽性はより豊かになって、多様な魅力が生み出されているんじゃないかなと思います。
ブライアン・メイの歌声は、温かく、包み込むような優しさ、そしてどこか内省的な深みを感じさせてくれます。彼の歌う曲は、感情がじわじわと溢れ出すような叙情的なものが多く、そのギターの音色と相まって聴く者の心にゆっくりと染み渡るような魅力があるんですよね。
「All Dead, All Dead」や「Sail Away Sweet Sister」を通してブライアン・メイの歌声に魅力を感じたなら、彼の他の楽曲もきっと気に入るはず。ブライアンの曲だけでまとめたベストアルバムを作ってみる、なんてのも面白いですね。