①職人気質なポップ狂バンドとして…
イングランド出身。職人気質なポップ狂バンドとして知られ、数々の名曲を生み出した10cc(テンシーシー)。
そのひとつが1977年にリリースされたシングル「The Things We Do for Love」で、この曲には「愛ゆえに」という邦題が付けられています。
「The Things We Do for Love」が収録されているアルバムの原題は「Deceptive Bends」というタイトル。なのに、なぜかそのアルバムの邦題も同じく「愛ゆえに」になっています。
ちょっと…いや、かなり紛らわしい💧
日本のレコード会社はなぜこんな邦題の付け方をしてしまったんでしょう…(笑)
そういえばティアーズ・フォー・フィアーズの「シーズ・オブ・ラヴ」の邦題もこんな感じで紛らわしかったような。
10ccのアルバム「Deceptive Bends」の最高位は全英3位、全米31位。いかにもイギリスというスタイルだとアメリカでは受け入れられにくい…というのは10ccに限ったことじゃないけど、そういうこともあってアメリカでの順位は低めです。
シングル曲の「愛ゆえに」は4人組だった10ccが分裂し、グレアム・グールドマンとエリック・スチュワートの2人態勢になってから初めて発売された作品。
メンバー2人が同時に抜けた影響を憂うファンの心配をよそに「愛ゆえに」は全英で6位、全米で5位のヒットを記録しました。
2000年の7月頃にはソニーのノートパソコン『VAIO』のCMでしょっちゅう流れていたので、10ccの名前を知らない方でもサビのメロディくらいは聴いたことがあるかもしれませんね。
YouTube【10cc - The Things We Do For Love】
②歌詞の和訳
Songwriter(s) - Eric Stewart, Graham Gouldman
Too many broken hearts have fallen in the riverToo many lonely souls have drifted out to seaYou lay your bets and then you pay the priceThe things we do for loveThe things we do for love
Communication is the problem to the answerYou've got her number and your hand is on the phoneThe weather's turned and all the lines are downThe things we do for loveThe things we do for love
Like walking in the rain and the snowWhen there's nowhere to goAnd you're feelin' like a part of you is dyingAnd you're looking for the answer in her eyesYou think you're gonna break upThen she says she wants to make up
Ooh you made me love youOoh you've got a wayOoh you had me crawling up the wall
Like walking in the rain and the snowWhen there's nowhere to goAnd you're feelin' like a part of you is dyingAnd you're looking for the answer in her eyesYou think you're gonna break upThen she says she wants to make up
Ooh you made me love youOoh you've got a wayOoh you had me crawling up the wall
A compromise would surely help the situationAgree to disagree but disagree to partWhen after all it's just a compromise ofThe things we do for love,The things we do for love....
③軽快なピアノの演奏が…
軽快なピアノの演奏が特徴的な「愛ゆえに」は、ポップ職人10ccの作品の中でも珍しく万人受けしそうなタイプのポップソング。
もともとエリックのボーカルはクセがないクリアな声質に定評があったわけで、それがゴドレイとクレームが脱退してポップ色が強めになった10ccの楽曲にマッチしています。
ちなみに10ccを脱退したケヴィン・ゴドレイとロル・クレームは2人の名前そのままの「ゴドレイ&クレーム」というバンドを結成。
独自のアプローチで楽曲とビジュアルの両面に重点を置いた作品を送り出し、「Cry」「Under Your Thumb」などのヒット曲は後にリリースされた10ccのベストアルバムにも収録されたりしています。
ゴドレイ、クレームが脱退したことで一番心配されていたコーラスはというと、その美しさはまだまだ健在。いつまでも耳から離れない、心地良いハーモニーを聴かせてくれています。
Aメロ、Bメロは良い意味で『期待してた通り』といった感じのメロディなのに、サビは意外にも短めでシンプルという少しひねった構成も新鮮。
ツボはしっかり押さえながらもありきたりなポップソングで終わらない。緻密に計算されたポップ理論の成せる業ですね。
④10ccの代名詞「アイム・ノット・イン・ラヴ」
1975年に発表された、10ccの代名詞とも言うべき「アイム・ノット・イン・ラヴ」 。
「オリジナル・サウンドトラック」からシングルカットされたこの世紀の名曲は、全英チャート1位、全米チャート2位の大ヒットを記録。
遠く離れた日本でも幻想的なコーラスとシンセサイザーにうっとりする人が多かったのか、いろいろなCMで使われました。
私が10㏄を知ったきっかけもこの曲が起用された2000年8月頃の『日産スカイライン』のCM。
夕暮れ時、澄んだ紫色の空間に溶け込んで優雅に走るスカイライン。アイム・ノット・イン・ラヴの浮遊感のある寂しげなメロディが絶妙に調和していて、目と耳をいっぺんに奪われたのは良い思い出です…。
『フワアァァァ』という感じの独特なコーラスは、グレアム、ケヴィン、ロルの3人の声を編集し、何層にも重ね合わせて3人×13音階×16トラック(624人分の声)で多重録音しているという…レコーディング知識のない私にはちょっと想像すらできない世界。
この多重録音の技術は「アイム・ノット・イン・ラヴ」のおよそ5カ月後にリリースされたQueenの「ボヘミアン・ラプソディ」にも少なからず影響を与えている、というのもうなずけます。
YouTube【10cc - I'm Not In Love】