①マンサンを初めて聴いたときの…
マンサンを初めて聴いたときのインパクトは大きかった。
1997年にデビューアルバム『Attack of the Grey Lantern(アタック・オブ・ザ・グレイ・ランターン)』が出て、いきなり全英チャート1位。イギリスじゃ「オアシス以来の最高のアルバムだ」なんて言われてたりして、当時からかなり注目されていた作品だったわけで。
そんな風に評価が高かったアルバムの中でも、僕に強烈な印象を残した曲が全英15位を記録したシングル「Wide Open Space」。
この頃、僕の周りにはマンサンを熱心に推してる人はあまり見かけなかった気がするんですよね。でも僕にとっては、グラムロックの香りをまとった耽美的なサウンドがとにかく新鮮で。
マンサンはブリットポップ全盛のなかでも埋もれることなく、一等星の如く輝いていたバンドでした。
そんなマンサンは当時イギリスではかなりの人気でした。でも、スタジオアルバムのリリースはたった3枚。新作が出ないなぁと思っていたらいつの間にかフェードアウトしていたという…。
あれほど強く光っていたのに短命で終わったのは、まるでエネルギーを一気に使い果たして燃え尽きた星そのもの。輝きが強かったからこそ光が失われるのも早かったけれど、その残光はいまだに僕の中で光り続けている。
今でも、ほぼ毎日1曲はマンサンの曲を聴いているのはそういうことなんだと思う。
Youtube【Mansun Wide Open Space】
②歌詞と和訳
Songwriter(s) - Paul Draper
I'm in a wide open space, I'm standingI'm all alone, I'm staring into spaceIt's always quiet through my ceilingThe roof comes in and crashes in a daze
I'm in a wide open spaceIt's freezingYou'll never get to heavenWith a smile on your face from me
I'm in a wide open spaceI'm staringThere's something quite bizarre I cannot see
I'm on the top of a hill, I'm lonelyThere's someone here to shout to miles awayI could be back in my house, for I careThey do not hear me it's the same always
I'm in a wide open spaceIt's freezingYou'll never get to heavenWith a smile on your face from me
I'm in a wide open spaceI'm staringThere's something quite bizarre I cannot see
Wide open space, I'm standingI'm all alone and staring into spaceIt's always quiet through my ceilingThe roof comes in and crashes in a daze
I'm in a wide open spaceIt's freezingYou'll never get to heavenWith a smile on your face from me
I'm in a wide open spaceI'm staringThere's something quite bizarre I cannot see
I'm in a wide open spaceIt's freezingYou'll never get to heavenWith a smile on your face from me(I'm gonna tell your motherThat you've been a naughty bugger)
I'm in a wide open spaceI'm staringThere's something quite bizarre I cannot see
③気づけばじわじわとダークな世界観に…
「Wide Open Space」は最初から最後まで同じようなメロディで進む曲なのに、不思議と単調には感じない。歌詞も繰り返しが多くて、歌詞カードだけ見たら「サビってどこ?」って思うかもしれないんだけど、演奏が少しずつ厚みを増していって、気づけばじわじわとダークな世界観に引き込まれている。この曲は、そんな不思議な力を持った曲。
イントロのギターリフには、不安をあおるような緊張感があって。例えるなら、初めてマンハッタン・トランスファーの「トワイライト・ゾーン」を聴いたときの感覚に近いものを感じたんですよね。でも、その不安感すらなぜか心地よかったりするから不思議。
曲全体にただよう不協和音めいた空気は、デヴィッド・ボウイの「アラジン・セイン」にも通じるものがある。アラジン・セインのあの間奏のピアノソロなんて、狂気的なまでに不協和音なのに、頭がおかしくなるほど美しくて。最初に聴いたときは理解が追いつかなかったけれど、強烈に脳を刺激されたことだけはハッキリと覚えてるんですよね。
マンサンの「Wide Open Space」にも、そんな得体の知れない魔力が息づいていると思う。聴くたびに、あの頃の衝撃がふっと蘇ってくるようで…。
④最初に聴いたマンサンの曲は1996年の…
僕が最初に聴いたマンサンの曲は、1996年のシングルOne EPに入っていた「Egg Shaped Fred」。
少し粗削りなのに、ひねくれたポップさが共存していて。当時ブリットポップに夢中だった僕には直球ど真ん中だったなぁ。そこから一気に惹き込まれて…。
デビューアルバム『アタック・オブ・ザ・グレイ・ランターン』がリリースと同時に全英1位に輝いたと知ったときも驚きはしなかった。本当にクオリティが高くて。数年に一度巡り会えるかどうかっていうくらい、僕のツボを突いてきたアルバムだった。
アルバム全体の雰囲気としては、グラムロックのきらびやかさに、ちょっとプログレっぽい複雑さが混ざったギターサウンドといった感じ。だけど6曲目の「Stripper Vicar(ストリッパー・ヴィカー)」のようなポップで耳に残る曲もあって、ポール・ドレイパーのメロディメーカーとしてのセンスが光っていた。
マンサンの魅力の核は、ポール・ドレイパーの書くメロディの良さ、退廃的で文学的な歌詞、そして中性的で独特な歌声。この3つが合わさって、唯一無二の存在感を生み出していたんだと思う。