①ボブ・ディランがリリースした…

アル・クーパーは、ボブ・ディランが1965年にリリースした「ライク・ア・ローリング・ストーン」にハモンドオルガン奏者として参加。

1967年にはBlood, Sweat & Tearsを結成した、多才なアル・クーパーの多彩なアルバムの中でも傑作として高く評価されているのが1973年リリースの「Naked Songs(赤心の歌)」です。

 

 

「赤心の歌」は魂を揺さぶるアル・クーパーの歌声とオルガンの音色が見事に調和したゴスペルライクな傑作アルバムで、特に6曲目、叙情的なオルガンとソウルフルなボーカルで黄金色の輝きを放つ「Sam Stone(サム・ストーン)」は感動的。

強く美しくこちらに訴えかけてくるようなゴスペルチックなアレンジは言葉にできないほど素晴らしい。

もう数百回と聴いているはずなのに、いまだにこの曲を聴いた後しばらくは余韻から抜け出すことができません…。

 

 

ちなみにこの曲はカバー曲で、1971年にアメリカのシンガーソングライターであるJohn Prine(ジョン・プライン)がヒットさせた曲がオリジナルです。

原曲への愛とリスペクトが感じられる、カバー曲の大成功例ですね。

YouTube【Sam Stone】

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ソニーミュージックエンタテインメント

 

Songwriter  -  John Prine

Sam stone came home
To his wife and family
After serving in the conflict overseas
And the time that he served
Had shattered all his nerves
And left a little shrapnel in his knee
But the morphine eased the pain
And the grass grew round his brain
And gave him all the confidence he lacked
With a purple heart and a monkey on his back
サム・ストーンは海外の戦争に徴兵され、
妻と家族のもとに帰ってきた
戦争は彼の心を打ち砕き、
膝には爆弾の小さな破片が残った
モルヒネは痛みをやわらげ、
おかしくなった頭の中に草を生やす
そうして彼が失った自信を与えてくれた
名誉戦傷賞と中毒症状も一緒に
[Chorus]
Theres a hole in daddys arm where all the money goes
Jesus christ died for nothin I suppose
Little pitchers have big ears
Don't stop to count the years
Sweet songs never last too long on broken radios
Mmm....
パパの腕にはお金が全部流れ込む穴がある
イエス・キリストが何のために死んだのかがわからないんだ
意外と子供は大人の話がわかるものさ
歳月を数えるために立ち止まるな
壊れたラジオじゃ甘美な歌も長くは続かない
Sam stones welcome home
Didn't last too long
He went to work when hed spent his last dime
And sammy took to stealing
When he got that empty feeling
For a hundred dollar habit without overtime
And the gold rolled through his veins
Like a thousand railroad trains
And eased his mind in the hours that he chose
While the kids ran around wearin other peoples clothes...
サム・ストーンの帰還は家族に歓迎された
だがそれは長くは続かなかった
ほんのわずかに残った金を使いきり、仕事へ向かう
そして心に虚しさを感じると
サムは盗みを働き始める
時間外手当無しで楽しめる100ドルのモルヒネのために
まるで1000本の列車のように、金は彼の血管を流れていった
自分が選んだ時間の中で気持ちが楽になっていく間、
子供たちは他人の服を着て走り回っていた…
[Chorus]
Theres a hole in daddys arm where all the money goes
Jesus christ died for nothin I suppose
Little pitchers have big ears
Don't stop to count the years
Sweet songs never last too long on broken radios
Mmm....
パパの腕にはお金が全部流れ込む穴がある
イエス・キリストが何のために死んだのかがわからないんだ
意外と子供は大人の話がわかるものさ
歳月を数えるために立ち止まるな
壊れたラジオじゃ甘美な歌も長くは続かない
Sam stone was alone
When he popped his last balloon
Climbing walls while sitting in a chair
Well, he played his last request
While the room smelled just like death
With an overdose hovering in the air
But life had lost its fun
And there was nothing to be done
But trade his house that he bought on the G, I. Bill
For a flag draped casket on a local heroes hill
サム・ストーンは一人きりだった
最後の風船を割るその時も
椅子に座ったままで壁を登り続けている
そして彼は最後の願いを演奏した
過剰摂取の余韻が空気中に漂い、
部屋に死のにおいが充満していたけれど
生きる喜びを失った彼にできることは何もない
地元の英雄たちが眠る丘の、国旗がかけられた棺に入るため
退役して手に入れた金で買った家を手放すしかなくなった
[Chorus]
Theres a hole in daddys arm where all the money goes
Jesus christ died for nothin I suppose
Little pitchers have big ears
Don't stop to count the years
Sweet songs never last too long on broken radios
Mmm....
パパの腕にはお金が全部流れ込む穴がある
イエス・キリストが何のために死んだのかがわからないんだ
意外と子供は大人の話がわかるものさ
歳月を数えるために立ち止まるな
壊れたラジオじゃ甘美な歌も長くは続かない

 

 

②1971年にジョン・プラインがヒットさせた…

ジョン・プラインが歌う原曲と聴き比べてみると、こちらはシンプルなアコースティックギターの弾き語り。アル・クーパーのバージョンほど重厚ではないし、ソウルフルでもありません。

 

 

歌われているのは、ベトナム戦争から帰還した兵士が心を病んでドラッグ中毒になってしまったという悲しいストーリー。

ベトナム戦争に参加したあと退役軍人となった「Sam Stone」は、薬物乱用や窃盗で人生を狂わせ、孤独になり心を病んで、最後に自殺してしまう。

戦争に行ったことにより、軍の恩恵で手に入れたもの全てを失ってしまったサム・ストーン。

彼が地元の英雄として扱われ、死に際して国旗がかけられた棺に納められることになった様子がゴスペルチックに歌われています。

 

 

アル・クーパーの哀愁たっぷりの歌声とオルガンの音色、そのバックに流れる輝かしいまでに崇高なコーラスの相乗効果は強烈で、とても感情移入せずにはいられない。

ラスト、サビ部分を転調させるアレンジも最高です。ここが間違いなくこの曲のハイライト。

なんていうかもう…神々しさしか感じません。

 

 

③『SUPER NICE PRICE 1600』という…

私は昔、Sony Recordsから発売された過去の名盤を廉価版で再発売した『SUPER NICE PRICE 1600』というシリーズばかり買っていた時期がありました。

 

「1600円だし、歌詞もライナーノーツも付いてるし、良い曲が1曲でも入ってればいいか!」

 

そんな軽い気持ちでなんとなく手に入れた「赤心の歌」。

ピアノ?オルガン?を弾きながら歌っているアルバムのジャケット写真がやたら神々しくて、そのころピアノオリエンテッドな洋楽にハマっていた私の興味を引いた…最初アルバムを手にした理由はそんなもんだったと思います。

 

 

ちなみに、私が以前の記事で書いたニッキー・ホプキンスの「夢みる人」も『SUPER NICE PRICE 1600』シリーズ。

このシリーズは名盤ばかりだったので昔はよくお世話になりました(笑)