①レーベルを倒産に追い込んだアルバム
アイルランド出身のマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン(マイブラ)は1990年代の初めにブームになったシューゲイザーを象徴するバンド。彼らの2ndアルバム「Loveless(ラヴレス)」は、ディストーションが効きまくったサイケデリックなギターの音世界に中毒者が続出し、シューゲイザーを世界に認知させるきっかけになったギターノイズの大傑作アルバムです。
当時マイブラが所属していたのはクリエイション・レコーズというインディーズレーベル。あのオアシスを見出したアラン・マッギーが創設したレーベルです。そのアラン・マッギーのもとでマイブラがラヴレスを制作するために費やした期間は2年半。1991年に無事リリースされたけど…チャートの最高位は24位止まり。
製作費には当時の金額でおよそ25万ポンド(4500万円)もかけてしまったためにクリエイション・レコーズを倒産に追い込むきっかけになったのは有名な話ですね。
ラヴレスは多くのフォロワーバンドを生み出したシューゲイザーアルバムの金字塔なのでもちろんノイジーな名曲が目白押し。その中でも特に私がヘビロテしている曲が「Sometimes(サムタイムズ)」です。
抑揚はなく、サビもない。聴こえてくるのはただひたすらに穏やかで夢見心地なギターのノイズと、陶酔感のある囁くようなケヴィン・シールズのボーカル。
まるで、果てしなく広い、見渡す限り水平線しか見えないノイズの海でゆったりと漂い続けているようなバーチャルな感覚に導いてくれるシューゲイザーバラードの名曲です。
↓Youtube【sometimes】
②歌詞の和訳
↓Songwriter - Kevin Shields
Close my eyesFeel me nowI don't know how you could not love me nowYou will know, with her feet down to the groundOver there, and I want true love to growYou can't hide, oh no, from the way I feelTurn my headInto soundI don't know when I lay down on the groundYou will find the way it hurts to loveNever cared, and the world turned hearts to loveWe will see, oh now, in a day or twoYou will waitSee me goI don't care, when you're head turned all alongYou will wait, when I turn my eyes aroundOverhead when I hold you next to meOverhead, to know the way I seeClose my eyesFeel me nowI don't know, maybe you could not hurt me nowHere alone, when I feel down tooOver there, when I await true love for youYou can hide, oh now, the way I doYou can see, oh now, oh the way I do
ノイジーな浮遊感に良く馴染む、抽象的で儚げな歌詞。だけどアルバム購入当時は歌詞の内容が全然わからなかった…。
なぜなら購入した輸入盤には歌詞の記載は一切なし。根性入れてヒアリングで聴きとろうと思ってみても、帰国子女でもなんでもない私がこの消え入りそうなほど脱力したボーカルからは何を言ってるか判断できるわけないですからね😭
③ジェリーフィッシュの2ndアルバムに…
以前ブログに書いたこともある好きなバンド『Jellyfish(ジェリーフィッシュ)』と『Silver Sun(シルヴァーサン)』。
『マイブラ的ノイズに挑んだ異色作!』とライナーノーツで解説されていた、ジェリーフィッシュの2ndアルバム収録曲「All Is Forgiven(優しく許して)」が私の好みど真ん中だったことがマイブラに興味を持ち始めた最初のきっかけ。
そしてそれから数年後、今度はシルヴァーサンのシングル「Too Much, Too Little, Too Late」を購入。そのカップリングにマイブラが1988年にリリースした「You Made Me Realize」をシルヴァーサンがカバーしたものが収録されていました。
カバーではあるけれど、それがマイブラの曲を初めて耳にした瞬間。
このカバーバージョンの You Made Me Realize を聴いたことでマイブラに対する興味がどんどん湧いてきて、大学入学で東京に住み始めたタイミングでついにラヴレスを購入!
マイブラに興味を持った時、すぐに地元でアルバムを探したことは探したんですよ。だけど地方にあるCDショップではマイブラのような当時の日本でそれほどメジャーじゃないシューゲイザー系は輸入盤すら手に入れることは難しかった。
まあ、なにがなんでも聴きたかったら店舗に取り寄せてもらうって方法もあったはずなんですけどね😅
④ノイズの心地よさを教えてくれたバンド
ラヴレスを初めて聴いた時は衝撃でした。
よく聴き取れないのになぜか甘美なボーカル。ギターの音はノイジーで歪みまくってるんだけど不思議と無性に心地いいし。
だけどマイブラの特徴は歪みまくったギターと、人によっては雑音にも聞こえてしまいそうなほどのノイズ。なのでミュージシャンや評論家だったり、シューゲイザー系のジャンルが好きな人から評価は高いけどいわゆる売れ線ではないだろうし、一般受けはあまりしないかも。
ラヴレス収録曲でも、キャッチーなのは強いてあげれば5曲目の「When You Sleep」と、10曲目の「What You Want」くらい。
個人的にはあとの曲はメロディを楽しむというよりも、ただ波のように押し寄せるノイズと脱力したボーカルに身をゆだねるといった感じなので、この手のジャンルに興味が無い人が聴いても『なんだこれ?どこがいいの?😑』状態でしょうね…。
マイブラのサウンドは控えめに言ってもクセ強ですけど、ただノイジーなわけじゃない。バックに流れるメロディは本質的にはドリーミーで幻想的なので、その雰囲気が好きだった私はちゃんとマイブラにハマれました(笑)
↓Youtube【when you sleep】
↓Youtube【what you want】
⑤22年もの時を経てリリースされた3rdアルバム
こんなに先進的なシューゲイザーのマスターピースを作りあげたにもかかわらず、2ndアルバムのラヴレス以降は曲が書けなくなるという不幸にも見舞われてやっと出た3rdアルバムはなんとラヴレスから22年後の2013年!
でもなにがスゴイって、ラヴレスから22年新作が出なくても待ちつづけた根強いファンが世界中にいたってことなんですよ。
1stと2ndのたった2枚のアルバムでシューゲイザーの伝説になったマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン。
この一見オシャレなバンド名は1981年のカナダ映画(殺人鬼が若者をどんどん殺していくというストーリーで、マイブラの曲調とは全く関係ない)から拝借してるらしいです。
映画の内容はいったん置いといて…言葉の響きだけならシューゲイザーのレジェンドバンドにふさわしい、センスを感じるカッコいいバンド名だと思いません?