①2002年に放送されたドラマ…

コアじゃない日本のファンには、2002年に放送されたドラマ『空から降る一億の星』の主題歌「Smile」や、映画『ノッティングヒルの恋人』の主題歌「She」、1stアルバム収録の名曲「Alison」など、バラードの印象が強いかもしれないエルヴィス・コステロ。

ロンドンがパンクムーブメントで盛り上がりを見せていた時期にデビュー。

難解な歌詞と唯一無二のポップセンスで音楽シーンを牽引し続ける、紛れもないトップスターの一人です。

 

 

コステロは1977年のデビューアルバムからの20年間だけでも18枚ものアルバムをリリース。

それだけ長いこと創作意欲が枯れることなく湧き続け、しかもそのアルバムのほとんどが母国イギリスのチャートでトップ10位内に入っているホントに凄いミュージシャン。

そんな稀代のポップスター、エルヴィス・コステロの作品の中でも特にこの暑い時期に聴きたくなる曲が「The Other Side of Summer (邦題:もう一つの夏)」です。

 

 

1991年にリリースされた「Mighty Like a Rose(マイティ・ライク・ア・ローズ)」に収録されたこの曲の最大の魅力は、ニヤケてしまうくらいの瑞々しさ(みずみずしさ)とクセ強なコステロの歌声でしょう。

ありきたりなポップソングとは一線を画したひねくれたメロディラインはコステロワールド全開。

ただ、キャッチーはキャッチーだけどそれはもう恥ずかしくなるくらいポップな曲でもあるので、コステロのファンじゃない人が聴いたら意見は真っ二つに分かれるかも…。

【Elvis Costello - The Other Side Of Summer】

 

 

②歌詞と和訳

Songwriter - Elvis Costello

The sun struggles up another beautiful day
And I felt glad in my own suspicious way
Yeah, yeah, yeah, yeah
Despite the contradiction and confusion
Felt tragic without reason
There's malice and there's magic in every season
昨日と違う美しさの太陽がもがきながら昇って来る
僕は疑り深い心で喜びを感じてた
Yeah, yeah, yeah, yeah
そこには矛盾と混乱があるにもかかわらず
理由のない悲劇に思える
どんな季節にも悪意と魔法が存在するのさ
From the foaming breakers of the poisonous surf
The other side of summer
To the burning forests in the hills of Astroturf
The other side of summer
毒々しく荒れ狂う波の水しぶきから
(もう一つの夏)
人工芝の丘の燃える森へと
(もう一つの夏)
The automatic gates close up between the shanties and the palace
The blowtorch amusements, the voodoo chalice
The pale pathetic promises that everybody swallows
A teenage girl is crying 'cause she don't look like a million dollars
So help her if you can
'Cause she don't seem to have the attention span
粗末な小屋と宮殿の間にある自動ドアが閉ざされた
刺激的な遊び、ヴ―ドゥ―の聖杯
誰もが飲みこむ蒼白で憐れな約束
10代の少女が泣いているのは
彼女が100万ドルの魅力には見えないから
だからできるだけ助けてあげてほしい
彼女は集中力が無いように思えるから
From the foaming breakers of the poisonous surf
The other side of summer
To the burning forests in the hills of Astroturf
The other side of summer
毒々しく荒れ狂う波の水しぶきから
(もう一つの夏)
人工芝の丘の燃える森へと
(もう一つの夏)
Was it a millionaire who said "imagine no possessions"?
A poor little schoolboy who said "we don't need no lessons"?
The rabid rebel dogs ransack the shampoo shop
The pop princess is downtown shooting up
And if that goddess if fit for burning
The sun will struggle up the world will still keep turning
"所有する概念が無い世界を想像して" と億万長者の誰かが言った?
"僕たちには教育なんて必要ない" と貧しい少年が言った?
シャンプーショップを荒らす反抗的な狂った犬たち
ダウンタウンで麻薬を打つポッププリンセス
もしその女神が火あぶりされる存在ならば
太陽は必死に昇り 世界は回り続けるだろう
Madman standing by the side of the road saying
"Look at my eyes, look at my eyes, look at my eyes, look at my eyes"
Yeah, yeah, yeah, yeah
Now you can't afford to fake all the drugs your parents used to take
Because of their mistakes you'd better be wide awake
道路脇に立っている狂人が言う
"私の目を見ろ、私の目を見ろ、私の目を見ろ、私の目を見ろ"
Yeah, yeah, yeah, yeah
今、お前にはかつて両親が使っていた薬を偽る余裕はない
彼らの過ちのためにしっかりと目を覚ますべきだ
From the foaming breakers of the poisonous surf
The other side of summer
To the burning forests in the hills of Astroturf
The other side of summer
毒々しく荒れ狂う波の水しぶきから
(もう一つの夏)
人工芝の丘の燃える森へと
(もう一つの夏)
The mightiest rose, the absence of perfume
The casual killers, the military curfew
The cardboard city and the unwanted birthday
The other side of summer
最も力強いバラ、香りはしない
気まぐれな殺人鬼、軍の外出禁止令
ダンボールの街、望まれない誕生日
もう一つの夏
The dancing was desperate, the music was worse
They bury your dreams and dig up the worthless
Goodnight, God bless and kiss "goodbye" to the earth
The other side of summer
The other side of summer
The other side of summer
The other side of summer
必死なダンスに最悪な音楽
彼らはキミの夢を埋めて価値のないものを掘り起こす
おやすみ、神の加護を願い、地球には別れのキスを
もう一つの夏へ
もう一つの夏へ
もう一つの夏へ
もう一つの夏へ

 

 

③夏を司るレジェンドコーラスバンド…

「The Other Side of Summer」は、かの有名な夏を司るレジェンドコーラスバンド、ビーチボーイズを意識して作られた曲。

曲の構成は Aメロ→Bメロ→コーラスパート の繰り返しではなく、各パートの曲調もプチ組曲な感じで雰囲気が変わっていくので、何度聴いてもとにかく飽きません。

特に1番のコーラスパートが終わったあとすぐAメロに戻るらずに、ちょっと暗めなトーンに変化するところは個人的にかなりツボ。

こういう一辺倒じゃない展開の曲を聴くと、2曲分のメロディをギッチリ詰め込んだって感じで不思議と得したような気分になれるのは私だけですかね?(笑)

 

 

コステロの書く歌詞は文学的と言えばいいのか、哲学的と言えばいいのか、難解な言い回しが多いような気がします。

今回は「The Other Side of Summer」を和訳してみましたが、やっぱりちょっと理解するのが難しい…。

『人工芝の丘が燃える森』って何? って感じで。

まあ私の訳が間違ってるだけかもしれないですけどね💦

でもその難しい歌詞のニュアンスを色々と想像しながら聴く楽しみを感じられる人は、コステロワールドの深みに心地良くハマれる可能性が大。

にしても、こんなにポップな曲なのにPVは革ジャンにサングラス、髪はぼさぼさのロン毛って…。

声や曲だけじゃなくて、もしかしたらファッションセンスも含めて何から何まで全てクセが強い人なのかもしれない。

 

 

④コステロの歌声はかなり…

エルヴィス・コステロの歌声はかなり独特。めちゃめちゃ鼻にかかっている感じで、誰だって1回聴けば絶対記憶に残る声。

シャウトの少し手前くらいの絞り上げるようなボーカルスタイルもなかなかに個性的で、このコステロ唱法がツボな人も多いと思う。

コステロの曲がどんなに上手いアレンジでカバーされたとしてもたぶん原曲を超えるほどの人気にはならない・・・ような気がするのはボーカリストとしてのエルヴィス・コステロがあまりにもオンリーワンだからなのかも。

 

 

余談ですがMr.childrenの「シーソーゲーム」のMVと歌い方、コステロをオマージュしてコステロに似せているというのは有名な話。

「シーソーゲーム」ほど90年代J-POPな曲を想像すると肩すかしをくうかもしれませんけど、コステロの数あるアルバムの中には親しみやすくポップな曲もあるので、そういう曲を探してみるのも楽しいと思います。

個人的には「Man called uncle」とか「(What's So Funny 'Bout) Peace, Love, And Understanding」あたりがおすすめかな?

【Men Called Uncle】